法律のいろは

再婚をした場合の相続と遺留分の問題とは?

2022年5月25日 更新 

 事業をされている・不動産をお持ちで特に相続の対象となる財産をお持ちの場合に,相続対策をどうするかは相続税の面・財産の引継ぎを確実に行うという面で重要になっていきます。特に,再婚をして前婚の子どもがいるという場合には,その子どもも相続人となるので,そのまま相続ということになると遺産分割協議やそこでの対立が問題になりかねません。再婚をするにあたって,再婚相手の連れ後がいても,その方と養子縁組をしない限りは法律上は親子関係が生じませんので,相続人になることもありません。

 ここを問題にしない対応策としては遺言で引き継ぎ内容を決める必要があります。財産管理である民事信託を使った方法でも同様の効果を持つスキームを持つことも可能ではありますが,いずれにせよ誰に管理させ・利益を誰がどこから受けるのかなどを決めておく必要があります。このほかに,生前贈与や買取で財産を移すという方法がありえます。民事信託や生前贈与・売買を使う場合には,相続になる場面では遺産に移した財産は含まれませんので,遺産分割協議での対立を避けることができるというメリットが存在します。

 

 ことに,再婚が存在する場合の遺産分割協議では離婚場面での感情的な対立の影響・長年前婚の子どもが関わってこない等疎遠なことによる行き違いなどからケースによっては大きな対立(感情面を含めて)が生じる可能性があります。遺産分割協議を避けることができるのはここを避けるメリットは存在します。また,令和1年7月以降の相続については遺留分の問題も遺留分減殺請求の場面での財産共有と解消の問題は出ないので,お金の清算で住むという面で,ある意味で財産の利用への制限はなくなりました。家業で営む会社の株式や財産への支障が出ることは事業自体を行いにくくなる問題が存在します。

 他方,民事信託を活用しようが生前贈与であろうが,遺言を用いようが遺留分の問題は避けて通ることはできません。他のコラムでも触れていますが,令和1年7月施行の法律改正によって,生前贈与については,10年以上前になされたものは,相続開始時に「遺留分を侵害する」ことになることを認識してなされた場合のみ,遺留分侵害額請求の対象となるとされました。相続までの期間が相当ある場面ですから,相続対策をする方の財産が今後増えないあるいはむしろ減ることが普通わかるだろう場面での生前贈与などでないとそう簡単には遺留分侵害額請求の対象にはならなくなります。財産をすでに築き後は使うことで減ることした考えにくい場合には,該当することもありえます。

 いざ遺留分の問題が出るのではないのかという場面では,再婚で関係が良好でない場合にはシビアな対立が生じることも予測されます。事前に遺留分放棄(勝てり裁判所の許可が必要)・事業承継対策ということで一定の前提を満たせば遺留分の特例(事業引継ぎにかかる財産や株式を対象から外す・評価額を固定する)という方法もありえますが,活用例は少ない模様です。そもそも,関係が良好でない場合には,前婚の子どもの協力も必要なこうした方法は使いにくいことも考えられます。そのため,遺留分侵害かどうかを考える上での財産をどう評価するのかという問題もありえますが,いざ請求があった場合に備えて金銭解決のためのお金も遺言などで引き継がせる保険金を活用するなどの方法の意味が大きくなってくるでしょう。

 

 ちなみに,財産があまりないケースであっても,前婚での子どもとの間で関係疎遠がある場合には,不動産の名義書き換えなどでも協力が得られない(遺産分割協議が必要になります)ことがありえます。この場合には実際には売却が困難ではあるが固定資産税評価額の存在する不動産をこの金額で評価しお金で解決が可能なのか(内容面も含めて)・話し合いがそもそも難しく家庭裁判所の調停手続きを利用するかを考えるかも検討する必要があります。不動産の名義書き換えをせずにおいておくというのは,令和3年の不動産登記法などの改正により,ペナルテイが今後も受けられることになりますので,最低限の対応は考えておく必要があると思われます。

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