法律のいろは

借金付きのアパートや古いアパートがある場合の相続の問題とは?

2022年5月26日 更新 

 収益物件を経営を営む際には家賃収入などの収入はある一方で修繕費用その他(建設資金)のための大きな借り入れをすることがあります。特にサブリースと呼ばれる一括借り上げによる転貸がなされている場合には,家賃が相場に合わない等の理由で減額請求がなされることもありますし,いずれにしても,家賃保証期間が過ぎるとマイナス収支になるケースもあるかもしれません。こうした場合に相続の場面でその物件をどうするのかはその後の負担に大きな影響を及ぼしかねません。

 

 収支が赤字見通しである(空き室が多い等)・返済の負担が大きな場合には,その財産を引き継ぐのか自体が問題になっていきます。遺言がある場合で引き継ぐとされている方については,何もなければ引き継ぐことになりますから,相続放棄・限定承認を行うのかどうかが重要なポイントとなっていきます。相続放棄は負担も引き継がないものの,最初から相続人ではなかったという扱いになりますので,他に財産がありすべて引き継がないというのが難しい場合には活用は難しくなっていきます。また,かなり短い期間制限があるなどハードルも存在しますので,その点も意識をしておく必要があります。そのほか,仮に相続放棄をしても次に引き継ぐ方が決まる前まで等一定の管理の負担を負うことになります。

 限定承認は引き継ぐ負債の範囲で遺産も引き継ぐ制度ですが,手間などが相当にかかります。すべて引き継がないことがまずい等の事情がある場合には活用を考えることになります。これらの制度は先ほど述べた収支見通しが厳しいこと以外に,そもそも収益物件の評価額が借り入れよりも相当下回る場合には考えることになる選択肢と言えるかもしれません。

 

 これに対して,収支見通しは赤字であるけれども,そこまで負債はないという場合には引き継いだ後に売却をする・遺産分割の手続きの中で売却してその代金(経費や税金を差し引いた後の金額)を配分するという方法を考える場合もありえます。相続の開始までの数年以内に大きな借り入れを起こして物件を購入した場合に,相続税評価額が購入額を大きく下回り,相続税の申告金額が相当変わるという場合には,すぐに売却するという方法には税務面でのリスクが出てくる可能性があります。要は,税金逃れのために,借り入れと購入を行ったのではないか⇒財産評価を通達とは別に行うべきではないか,という話になります。一説には,相続開始から3年は売却しない方がいいという見解もあるようですが,確たる根拠があるわけではないうえに,先ほどの流れが存在するのであれば,税務面でのリスクは否定できないように思われます。

 少なくとも,ここで取り上げたケースでは引き継いだ時点で売却見通しの金額から負債を引いてプラスが出る程度のものですから,相続開始に比較的近い時期に大きな借り入れをして物件を購入⇒相続税評価額と乖離が大きく税金負担に大きな影響が出るというケースとは限りません。税務リスクがありうるかもしれないという場合以外には,遺産分割時点での売却やその後の売却に税務リスクまで派内うように思われます。以前から大家事業を営んでいて修繕のための借入はあるけれども,今後の大家事業を営む見通しがつかないケースについてはあまり気にしなくてもいいことは十分にありえます。売却をする場合には敷金相当のお金をどうするのかなどの条件面を詰めておく必要があります。

 また,特定の方が引き継いだ場合には,その後大家事業がうまくいかない場合のリスク(うまくいく場合は利益)を負う(得る)ことになります。ここの見通しなどを使たうえでどのような対応をするのかを決める必要があります。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。