法律のいろは

遺産にアパートなど収益物件がある場合の注意点とは?(遺産分割)

2022年5月27日 更新 

 専業で大家業を営んでいるかどうかはともかく,不動産の活用として駐車場やアパート経営をしている場合には,これらも遺産に含まれることになります。相続税にお対策としてアパートを建てるということもあるかもしれませんし,財産の有効活用としてアパートを建てる・駐車場として主液を売るということがあるかもしれません。財産管理の方法として生前贈与や民事信託を活用した方法もあり別のコラムで触れる予定ですが,今回は遺言を含めて相続開始時までに何もせずにいた場合に,遺産分割でどういう問題が出てくるのかを触れておきます。

 

 これらの不動産も遺産分割の対象となるとともに,家賃などの賃料収入が発生します。賃料収入は継続的に発生しますので,遺産分割のための話し合いをしている間も生じていきます。最高裁の判例上,賃料収入自体は相続開始時点で発生するわけではなく,その後発生するものですから,相続開始後に発生する家賃分は遺産分割の対象ではないとされています。もちろん,相続人の合意でここも配分をすること自体は可能です。ただし,税務上の注意は必要でしょう。これに対し,相続開始前の家賃は単に現金あるいは預金になりますので,遺産に含まれるのが通常です。預金や未払いの家賃は遺産分割の対象になりますが,特に後者は回収可能性の問題もあります。アパート経営を引き継ぐのが誰かなどを含めての協議が必要になるでしょう。敷金の返還債務とともに敷金として預かっているお金の引継ぎもきちんと行う必要があります。

 遺産分割をせずにそのまま共有にしてある場合には,どこかの口座に家賃を振り込んでもらうことが多いと思われますが,その振り込まれたお金について他の相続人の方から支払いを求められる(もちろん,相続分に該当する割合に応じて取得する権利が存在します)ことがありえます。放っておくことで大きな金額になる・うっかり使ってしまうことで突然の負担になることもありえます。

 

 遺産分割をするうえでは金額評価が問題になる可能性があります。不動産の評価方法には固定資産税評価額や相続税評価(路線価や財産評価基本通達による方法)・不動産会社の査定・不動産鑑定などの方法があります。収益物件の収益性の点などは固定資産税評価額や相続税で問題となる相続税評価では評価されていないので,特に家賃収入が大きな物件では相続税対策と異なる考慮が必要な場合も出てきます。不動産鑑定は依頼するのに相応の金額が出てきますので,対立状況や費用見通し等を踏まえたうえで決めていくことになるでしょう。実際には不動産に設定された担保やそのための借入の引継ぎなども含めて話をしていく必要があります。収益物件以外に大きな財産(金銭や代償金用の保険金)がない場合には調整が困難になる場合(代償分割という一種の買取の形の分割を行うには,代償金の支払いが確実に行えるのかどうかは話をつけるための重要な要素になります)には,収益用物件を取得するための方法や誰が受け取るのか,売却を行って代金を分ける形にする等方法を考える必要があります。

 新たに借り入れで支払う場合には,実際に借り入れを行うことができるのかなど検討すべき点は多数あります。問題を避けるには遺言や財産管理・生前贈与を行う等の方法がありますが,こちらには遺留分の問題などが存在します。故地井らは別のコラムで触れる予定です。

 

 ちなみに,遺産分割で取得する場合には,先ほどの既存の家賃の問題のクリア(相続開始後から遺産分割で話がつくまでの分)し,名義や振込先など後で問題が生じない(借主が別の方が取得した口座に支払う等の問題)が生じないようにする注意も必要です。このほか,アパートの財産評価(相続税評価)については,賃貸用物件の存在により不動産の価値が落ちているとして減額を認める扱いが財産評価基本通達上定められています。問題となるのは空き部屋が存在する場合の扱いですが,ごく一時的に空き部屋になっていた場合しか減額評価を認めないとされています。どこまでの機関であればごく一時的なのかが争われた裁判例はいくつも存在していますが,相当制限的な場合しか該当しない点には注意が必要です。単に店子を継続的に募集していればいいというわけではありません。

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