法律のいろは

財産にアパートなる収益物件がある場合の注意点は?(遺言・生前贈与や民事信託の活用)

2022年5月28日 更新 

 遺産の中に収益物件がある場合に,遺言もないとなると遺産分割で面倒が生じかねないという点は別のコラムで触れています。今回は遺産分割での対立などが問題にならないように,遺言でだれかに残すようあらかじめ決めておく・生前贈与や民事信託などそもそも遺産に含まれないようにする方法について触れていきます。

 

 まず,遺言で相続人になる子供(要旨を含む)に相続させるという遺言を遺す・別に他の方に遺贈という方法をとれば,その方が収益物件を当然に引き継ぐことになります。法改正により遺留分の問題は小さくなりましたが,別の問題は出ています。遺留分侵害額請求をしてもアパートが共有になるわけではありません。ただ,遺言で引き継ぐことが決まっても相続人の法定相続分を超える部分は登記をしないと遺言内容を主張できないとされることになっています。極論になりますが,相続人の一人の債権者が相続登記を代わりに行い(相続人でなくても行うことは可能です)・その持ち分を差し押さえられるとなると,その後の対応が非常に面倒になります。差し押さえの効力を否定できなくなるためで,その後の交渉などで負担が出かねません。

 

 次に生前贈与を行う場合には,遺留分の問題はともかくとして今述べたような問題はおこわないように思われます。ただ,遺産分割の関係で行けば特別受益として調整要素になることもありえます(調整不要の意思を示しておけば別です)。このほか,贈与税がかかる可能性があります。相続時精算課税の選択をしておけば,一定の金額までは課税はされず税率も一定割合なので贈与税よりは小さくなります。相続時の相続税で精算されることになりますが,どちらがいいかは税理士の方にも相談の上考えておいた方がいいでしょう。ちなみに,生前贈与の有無が後で問題にならないように,きちんと書類を遺しておいた方が遺産分割の対象になるのかどうか・相続税の対象になるのかどうか(相続時精算課税を選択した場合には相続税で清算が行われます)を避けるためには意味があるものと思われます。

 

 また,民事信託を活用する方法もありうるでしょう。ここは収益物件を所有し不動産賃貸業を営む会社を設立し,その株式を生前贈与・遺言で誰かに渡す・民事信託の管理対象にするという方法もありうるでしょう。収益物件を現物出資し株式を得るという形になるでしょう。課税される税金が異なる・誰に課税されるか各方法により異なりますので,ここも税理士・法律専門家に相談して対応を考えた方がいいでしょう。そして,民事信託については先ほど触れた株式・収益物件を信託財産として受託者に管理してもらうという方法が考えられます。ここで民事信託についての詳しい話までは触れませんが,相続人の誰かに受託者として管理を行ってもらう(例えば,子どものうちの誰かを受託者とする)という方法が考えられます。家賃収入が受益する財産になりますが,当初はオーナー本人・その後は孫あるいは特定の方が家賃収入をとることができるような仕組みを作ることが可能です。特に,障がいのあるこそ藻がいる等生活保障を図ることができる仕組みを作りたいのであれば,成年後見制度にはないメリットもあります。ただ,成年後見制度と民事信託の活用はどちらしかとってはいけないというものでもありません。,他の方法との併用もありえるので,収益物件をそのままにしておくことで成年後見制度活用時のように,積極的な運用ができない・他の親族の生活費に充てることへの制限があるのを避けたいのであれば,こうした財産管理の方法(ご本人の財産から動かすという方法)もありうる方法です。なお,民事信託の場合には,受益者に対して贈与税や家賃収入についての所得税がかかるので,そうした点の対応ができるのかどうかの手当ても必要になります。

 ただ,収益物件を本人の管理財産から外す場合には,その収益物件に大きな修繕などの費用がかかり,そのために必要な借り入れを行う可能性がある場合には見通しの注意を行う必要があります。「信託内融資」という監理財産への融資を受けるために必要となりうる「信託口口座」の設定をきちんと行うことができるのか(この記事執筆時点でも必ずしも金融機関が設定や融資を行ってくれるとも限りません)を注意しておく必要があります。信託契約設定時の問題などから当初うまくいかず,後に対応を当初してもらった専門家に損害賠償請求を行った裁判例も存在します。いちいちこうした対応に至ること自体が面倒ごとですから,当初から専門家と対応等をきちんと行い調査等の結果を聞いておいた方がいいでしょう。

 民事信託で管理を任せる財産になる場合,受託者になった方が修繕などの義務も負うことになります。振込先や火災保険などの対応も重要です。店子の方が退去する場合の敷金の返還債務も管理を任せている財産から負担すべきものになりますので,この支払のためのお金の手当てなども重要になっていきます。

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