法律のいろは

相続したアパートを共有名義にしたままでのメリット・デメリット,解消方法とは?

2022年5月30日 更新 

 親がアパート経営をしている場面で,相続時に遺産分割として各自の共有にしておく方法・遺産分割せずにそのままで名義のみ相続登記をしておくという方法が,共有名義の場合はありえます。いずれも,そのアパートが共有のままである点は変わりませんが,後者は他の遺産も分割されてないままの状況である点に違いがあります。

 

 いずれの場合でも,家賃は当然に持ち分に応じて取得することになりますが,貸主としての義務である修繕や敷金の返還義務は負うことになります。敷金の返還義務は相続開始後遺産分割までに生じていたものは全額の返還義務を各自が負う形になります(どなたかが負う形にしていれば話が変わる面があります)。したがって,共有であることで各自利益を得る一方で負担も負うということになります。また,共有となると各自持ち分に応じた利用を物件に対してできる反面,大きな改造を伴う修繕や売却などには制限が加わることになります。令和3年に所有者不明土地の問題への対応などの観点から共有に関する法律の内容が一部変更になりましたが,ここは変わりません。変更となったものの一部は,これまで共有者全員の同意が必要であった「変更」というものが形や効用に大きな変更がない限りは全員の同意が必要でなくなった・行方不明者が共有者の一部にいる場合に対応策が定められたこと・共有物を利用する場合に特定の共有している方に影響を与える場合にその承諾が必要になったことなどの点が挙げられます。

 店子が減少し空き家が出てきた場合などに家賃を下げて対応するにも,他の共有者の同意がないとできません。家賃の変更は「管理行為」とされ,共有者の持ち分の過半数によることになります。意見の対立があると変更が難しくなります。維持修繕の費用は各共有者が負担すべきものですが,支払いをしない方がいる場合には,その請求などをめぐって対立が生じる可能性もあります。もちろん,特定の方に実際運用や管理を任せるということであれば対立は生じませんが,この姿勢が崩れた段階で問題が出てくる可能性もありえます。

 

 仮に対立が出てきた・アパート経営に関心のなくなった共有者が出てきた場合には共有関係の解消が問題になってきます。ケースによっては未払いの負担すべき管理費用の請求の問題も出てくるかもしれません。解消には遺産分割がなされていない場合には遺産分割協議を行うことが基本となります。ただし,令和3年の法律改正により,長期間遺産分割協議がなされない場合に一部ルールの変更が加えられました。相続開始時点から10年間遺産分割協議がなされない場合には,物件をはじめとした不動産の共有を解消するのは共有物の分割の手続きを裁判所に申し立てる必要があります。要は共有物分割の裁判になるわけですが,相続人の保護のため一定期間に異議が出ると話が変わってきます。

 遺産分割がなされないままの場合には,これらの制度を活用することを考えることになります。これに対して,遺産分割は終わり名義を共有にしている場合には,共有物分割の手続きによることになります。別に裁判による必要はありませんが,こちらはアパート経営を行いたいという側からの分割請求もあれば,アパート経営に関心がない方が共有持ち分を他の方に譲渡してその方から分割の請求をされることもありえます。もちろん,関心がない方からの解消の話もありうるでしょう。

 この場合,現物に分割するのが原則ですが,どなたかが実質買い取る形もありうるところです。アパート経営に関心のない方からは,まさしくこの実質買い取りを求められることもありえます。全体を売却しての代金清算は例外ではありますが,一応可能性としてはありえます。ここで注意すべきは実質買い取りの場合の金額になります。高額での買い取り請求がなされたとしても,実際には不動産鑑定といった時価によるべきではあります。また,あまりに濫用的な分割のケースではごく例外ではありますが,分割ができない場合もありえます。もちろん,金額いかんによってはアパート経営円滑化のために共有解消をした方がいいこともありえます。どのような形態になるのか・その他金額面などを考慮して対応をする必要があります。

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