法律のいろは

無効な遺言書は死因贈与という贈与の意味合いを持つのでしょうか?

2022年6月11日 更新 

 「死因贈与」とは贈与契約の一種で,贈与をする方がなくなる際に贈与の効力が生じる契約になります。亡くなる際に効力が生じる点では遺言で相続をさせる・贈与をする(遺贈)をすることと変わりはありません。こういったこともあって,法律上その性質に反しない限り遺贈に関する規定が死因贈与契約について適用されるとしています。ただし,遺言と死因贈与には異なる点があります。

 

 遺言による場合には,遺言をする方の意向のみによって財産を移すかどうかを決めることができます。これに対し,死因贈与契約では,契約である以上はもらう側がきちんと契約時点でその存在を知っていて承諾をしている(もらう意思を示している)必要があります。したがって,贈与の意思を示す書類が存在しても,その存在をもらう側が知ったのが相当後であること(相続開始後)等到底承諾をしているとは考え難い場合には,死因贈与契約が成立したとはいいがたくなります。遺言があれば相続開始時点に財産が当然に移転している(ただし,「相続させる」という趣旨の遺言は登記をしないと法定相続分以上の権利主張に制限が加えられる可能性が現在はあります)のと同じく,死因贈与であっても相続開始時に権利が移転することから,遺留分侵害額請求の問題もお金の問題ですから,権利を移すことが可能ではあります。

 遺言でも特に自筆証書遺言については記載の形式について厳格な規制が存在し,日付や氏名その他を定まった通り記載をしておかないと遺言としては無効となります。この場合でも一定の財産を移すことを示していて,相手もその存在を知っていて受け入れる意思があれば,死因贈与契約として有効となります。贈与する意思が書類で示されていれば,その存在を死亡時までもらう側が知らない等の事情がない限りは死因贈与契約によって権利が移転する可能性は高くはなります。契約書が作成され,間違いなく贈与をする方の署名や印鑑が存在していれば,その方の意思に基づいて作成されたと裁判で推定されることになりますから,作成の経緯や動機などから見ての不自然さや印鑑の管理などの点で問題がない限りは契約は成立し無効とは言いにくくなるでしょう。もちろん,その際の贈与をした方の健康状態などから判断能力がない可能性が高い場合は別です。作成の経緯が不明確で署名に偽造の可能性がある場合には,契約の成立や有効性に問題が生じることがあります。本人の名前もなく,記載されている書面や経緯・筆跡が不可解である場合にはその可能性が出てきます。単なるメモ書きからその意思が読み取れるといえるか等書面の体裁などからも問題となるところです。相続開始後当初存在していないのがその後出てきて皆賀認識したという場合には有効性はもちろん後で作ったものではないかという点が問題になる可能性もありえます。

 こうした問題を防ぐのであれば,きちんと疑義がない契約書を作成しておくか・遺言書の記載内容も注意を書面を作成しておくことがトラブル防止になります。したがって,誰も存在を知らない書類やそのことがうかがわれる書類では遺言としては無効であっても死因贈与としては有効には当然にはならない点にも注意が必要でしょう。

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