法律のいろは

所在不明の方に対する「失踪宣告」の申し立て。どこまでの方が申し立てが可能なのでしょうか?

2022年6月12日 更新 

 遺産分割を行う相手方(相続人)・その他不動産などの所有者の所在が長年不明な場合の対応方法には,不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる,選任された管理人との間で話を進める・失踪宣告によりその相手も亡くなったという前提で話を進める,という手段が考えられます。

 前者と後者の違いとしては,不在者財産管理人は一時的に所在不明の方の財産管理を任せるという制度・失踪宣告は相続開始などの意味合いを生じさせる(イメージとして後者の方が大掛かりなもの)という点で簡単に言えばあります。その点が申し立てができる方の範囲として法律で定められた範囲にも表れています。不在者財産管理人の選任申し立ては,「利害関係人」「検察官」,失踪宣告は「利害関係人」のみとされています。失踪宣告のうち特に大きな災害などがない場合には,7年の生死不明という状態が必要です。現在までの間で生存をうかがわせることが存在し,7年の生死不明と言えなければ前提を満たしません。どちらの手段をとるかですが,所在不明な方の相続開始などの影響を避けたいならば,前提要件の調査の話もありますが不在者財産管理人の選任申し立てになるのではないかと思われます。

 

 申し立てができる方も「利害関係人」のみが法律上は共通しています。ここが全く同じなのかどうかも問題になってくるところです。比較的最近こうした点が問題になった裁判例(東京高裁令和2年11月30日決定・判例タイムス1486号28頁)があります。このケース自体は,所在不明の方が相続人に該当する方がなくなり,その方へ財産管理などの契約に基づき報酬を請求できる方から失踪宣告の申し立てがなされたものです。申し立てた方と所在不明の方との関係は,亡くなった方が支払うべき報酬の支払い義務を所在不明の方が引き継ぐというものです。つまり,申し立てをした方は所在不明の方に引き継いだ報酬を請求できる立場ということができます。

 ここで申し立てをした方が,法律で定める失踪宣告の「利害関係人」にあたるのかどうかが問題になりました。「所在不明」が7年となっていれば,他の要件を満たすことになりますし,調査から言えるのであれば,この問題の身がポイントになります。1審・2審ともに「利害関係人」には当たらないという判断をしています。その理由として決定では,同じ「理解関係人」と言っても,不在者財産管理よりも失踪宣告の方が相続を所在不明の方に発生させるなど影響が大きいこと等を踏まえ,失踪宣告では制限的に考える・失踪宣告をすることについて法律上の利害関係人に限定するとされています。

 このケースでの申立人は債権者の立場に立つものではあって法律上の利害関係を持ってはいますが,不在者財産管理によって生産を求めることが可能であることもあります。失踪宣告による相続開始を行ってまでという必要はないこともありますので,失踪宣告についての法律上の利害関係があるとは言えないのかもしれません。一般的な寿命を超えて生死不明の方は相応に存在し,戸籍の職権消除や所在者不明の土地を解消すべく施策が打たれているところではあります。ただ,不在者財産管理人の活用で対応ができる部分はある(費用は掛かります)こともこの決定では考慮されていることから,基本的には不在者財産管理人の制度活用を考えることになるのではないかと思われます。

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