法律のいろは

法定相続分に影響を与える相続人について親子関係不存在を求めることはできるのでしょうか?

2022年6月26日 更新 

 離婚などの場面以外にも,相続関係の中で認知や親子関係が存在するのかどうかが問題になることがあります。法律上の一定の親族について法定相続分が法律上定められているため,亡くなった方との親族関係の存在は問題になることがあります。別のコラムで触れた養子縁組の無効の裁判や認知の裁判がありますが,そのほかに戸籍上は親子関係があるかのように記載があるものの実態は存在しようがなく親子関係の不存在確認を行うことができる場合があります。ただし,この記事を書いている時点(令和4年6月)では親子関係等の法改正の議論がされていますが,嫡出否認の裁判などでないと親子関係を争えない場合には,この期間制限を過ぎると否定ができなくなることになります。

 親子関係を否定する際には,家庭裁判所での調停や裁判での解決を図ることになりますが,親に対して申立てや提訴ができない相続開始後の場面では検察官を相手として提訴をすることになります。ただし,親子関係不存在は確認の訴えをいう,法律上の親子関係が存在しないことの確認の裁判などを起こすことになります。この裁判を起こすには確認の利益というものの存在や現在の法律関係への影響が存在することが要求されています。そのため,直接親子関係が亡くなった方と特定の相続人の間にない場合には,直接親子関係を否定することが意味がないのではないのかということが問題となります。

 

 この記事執筆時点に近い令和3年6月に他の法定相続人が直接親子関係にない別の方と亡くなった方との間の親子関係がないことの確認の訴えを起こすことが認められるか否かが問題になったケースがあります(最高裁令和4年6月24日判決)。判決文によれば,亡くなった方の孫(この方の親自体は提訴時に既に死亡)が,別の子どもとして戸籍上載っている方(この方も既に死亡・この方の子どもが存在しています)というケースです。この場合には,この事実関係だけからは,提訴した孫と戸籍上子供として載っている方(裁判では被告となる方)の子ども(亡くなった方から見れば孫)が,亡くなった方の法定相続人になることになります。甥にあたる提訴した方が祖父母と叔父叔母(伯父伯母)との間の親子関係がないことの確認を求めるもので,提訴した方自身の親子関係ではありません。ただし,他の孫の法定相続分がないということ(法律上孫と言えなくなれば法定相続分はなくなります)になれば,提訴した方自身の法定相続分はなくなる(判決文から見るとこの方のみが法定相続人)ことになります。

 こうしたケースについて1審・2審は,伯父伯母(叔父叔母)と祖父母の親子関係は自らの親子関係(祖父母との関係)に影響を与えない(法律上の身分に影響を与えない)からということで,確認の裁判を起こすことができる場合でないとして訴えを却下(簡単に言えば中身を審理することなく門前払い)する判断をしています。最高裁はこの判断を否定しています。そこでは,提訴する方が否定を求める親子関係について法律上の利害を持つ場合には,法律上の身分に影響を与える場合にあたるという理屈を示しています。ここでは,先ほど触れました法定相続分が増える(叔父叔母(伯父伯母)と祖父母との間に法律上の親子関係がないと孫として代襲相続あるいは祖父母を叔父叔母(伯父伯母)が相続することはなくなります)場合も法律上の利害を持つ場合に含むと判断しています。

 

 親子関係の存在に争いがあって否定を求めることができる場合は現状では限られていますが,相続の場面でも問題になることはありえます。先ほどのケースでは中身の判断(親子関係が存在するのかどうか)をしていないため,その審理のため差戻がなされています。この判断もあって,法定相続分に影響を与えるような親子関係の不存在に関しても提訴などが視野に入ることもありうるでしょう。

 

 

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