法律のいろは

事故や遭難などにあったとして失踪宣告がされる場合とは?

2022年8月8日 更新 

 長く消息不明であるために財産管理の負担も重く相続が発生した扱いになる失踪宣告ができるのかどうか(一般失踪と呼ばれるもの)よりも,事故や遭難にあったものの生死不明の場合はそこまでケースとしては少ないものと思われます。こうした場合も特別失踪と呼ばれ失踪宣告がなされうるケースには当たります。

 特別失踪の場合には,その事故や危難が終わった際に死亡した扱いをする(相続は失踪宣告がされっることによって死亡扱いを受ける時点)からなされることになります。普通失踪と同じく,実はその方が生存していた場合には,失踪宣告の取り消しの申し立て(失踪宣告とともに家庭裁判所に申し立てて,要件を満たすものとして認めてもらう必要があります)が必要となります。

 特別失踪がなされるには通常死亡することがありうる危難にその方が遭遇し,その後1年が経過して生死不明であることが必要とされます。この「危難」とは何かということが何かという点は問題にされますが,個別具体的な死亡原因となる事情(一般的な原因・その方独自の原因双方ありうる)が必要と考えられています。雪崩や津波・自身といった大規模な自然災害はその候補となりうるものですが,例えば,スキーの練習に軽装のまま吹雪の中出かけて行方不明となったケースで「危難」を認めたものも裁判例の中にはあります(議論の詳細は判例タイムス1441号72頁以下で簡潔にまとめられています)。

 

 比較的最近も雪山登山(鉱山)をしていた方が行方不明になったケースについて,特別失踪にあたる「危難」があったのかを判断したケースとして東京高裁決定平成28年10月12日・判例タイムス1441号72頁があります。このケースも先ほど触れたケースに近く,雪山登山に不慣れな方が軽装備で出かけたところ行方不明になったことが問題になっています。1審で「危難」にあったと認めていない点を2審で覆したもので,それぞれ「危難」を人が遭遇すると死亡の危険性が高い自称一般に遭遇したことを指すとしたうえで,具体的な事実認定を行っています。1審では具体的に雪山遭難にあったことまでは認められない・ただしそのことの可能性はあるとしつつ,「危難」にあったといえるには具体的に「危難」の存在が認定される必要があるとして,警報がその当時出ていなかったことなどからその存在は認められないと判断しています。

 これに対し,2審では危難にあったとされる方の雪山登山経験や装備の程度・当日の問題となった山の登山道の状況(いわゆるホワイトアウトの可能性がある状況であること・積雪中の穴の存在やそこへの転落可能性・当日の気温や新設の想定量や積雪量等)を詳しく認定し,凍死・視界不良や転落のリスクを踏まえた死亡可能性を検討し,死亡の蓋然性が十分認められる状況であったと判断しています。

 

 具体的な「危難」の存在が認められればそこに遭遇していないとは言いにくいので,問題はそこまではっきりとは認め5ラれていない場合に,どこまで範囲が広がる可能性があるかという話になります。2審の判断によると,問題となる方の状況や当日の天候や地形などの状況から見て死亡リスクがどこまであるのか・具体的な死亡可能性があるといえるだけの状況と言えれば,死亡の蓋然性ある状況であったとして「危難」に遭遇したと判断しているように思われます。同様のケースは登山その他で消息を絶ったようなケースが想定されますが,この考え方に従えば,同様の諸事情をとらえることになるでしょう。

 失踪宣告の手続きをするには,法律上生存しているならば届け出るように等の「公告」も要求されていますが,実際には今回触れた実体としての要件をクリアするのかということになります。一般失踪の際にも生存がどこまで認められているのかという調査が必要など,そのハードルはそう簡単ではない話かと思われます。

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