法律のいろは

遺言書の作成が別人でなされたかどうかが問題になる場合とは?

2022年8月23日 更新 

 遺言書が実は別人に作成さしれたかどうかが問題となる場合しては,自筆証書遺言では偽造(別人が作成)したのかどうか争いが出てくる・他人が公証人役場に本人に成りすましていく場合などが考えられます。このうち,本人確認などを公証人がきちんと行うためそこまで公正証書遺言でなりすましが問題になるとは思われませんが,比較的最近でもなりすましかどうかが問題になったもの(大阪地裁令和2年6月24日判決・家庭の法と裁判39号88ページ)があります。

 

 自筆証書遺言では,筆跡から見て偽造なのかどうかの他に,その遺言を遺す理由があったのかを内容や経緯等から考えていくことになります。そもそも,遺言を遺した方に自分で遺言を遺す状況がない場合には,偽造の可能性が高くなるものと思われます。もちろん,体調面などから見て判断能力がないのであれば,自ら遺言を遺すとは官が憎く偽造の可能性をうかがわせることになります。手足がマヒしていたのであれば,とても自筆で書類を書くことはできませんし,認知症その他で判断ができにくい状況であったのあれば自筆で遺言を書いたとは言いにくい可能性があります。他の方が手を添えた場合も自分で書類を書くことができるのか・手を添えた方の意向がはたらく可能性もあり,自筆で書いたといいにくい事情となります。

 筆跡が別の方の物と類似した点があることや印鑑をその方が管理していたこと・その方が問題となる遺言で絵利益を売る場合には,他の事情も考慮してとはなりますが,偽造を裏付ける場合もありえます。逆に遺言をした方のちっひせきが顕著に似ている場合には,自筆で遺言を書いたことを裏付ける事情の一つとなりえます。筆跡については筆跡鑑定等も要素とはなりえますが,紛争性が高く裁判になった場合に当然に採用される・信用性を強く肯定されるとは限らないという面があります。先ほど触れた裁判例でも4つの筆跡鑑定などの信用性を検討していますが,いずれも否定的に判断しています。氏名などの記載に顕著な一致がある・類似点と相違点の詳細な検討をしている場合には,信用性をプラスに考慮する可能性があります。他方で,対照筆跡と遺言書の事態が異なる場合や遺言書と対照筆跡がかなり異なる時期のものである場合には否定方向で考慮される場合があります。

 単に似ているというだけではなく,ある程度近い時期の筆跡であって顕著に似ている点があるのかどうか等また鑑定においてはプラスマイナスを様々考慮している点はプラスになる可能性があります。ただ,一方はボールペン・他方はサインペンや毛筆のように比較前提が異なる場合にはマイナス方向になることもあるでしょう。

 

 その他筆跡の乱れなどは当時手の震えなどが遺言者にあった場合には本人が書いたことを裏付けることがありえますし,客観的な記録での書体と異なる遺言書の書体で書かれた遺言書は遺言者が書いていないことを裏付けることもありえます。

 

 このほかに,問題となっている遺言を遺すことがそのころの遺言者の状況や他の方との関係性や経緯から見て自然なのかどうか・記録などから遺言をした方の当時の言動と整合するのかどうかも自ら残したのかどうかにかかわる要素とはなりえます。

 

 

 以上は自筆証書遺言についての話ですが,先ほども触れた大阪地裁令和2年6月24日判決では公正証書遺言でのなりすましによる無効なのかどうかなどが争点(なりすましかどうか以外の争点はここでは省略します)となったものです。公正証書遺言でも遺言者(このほか証人も)署名と押印をすることになりますので,その署名が本院のものかどうかもなりすましの有無とは関わるところです。ここから筆跡鑑定などの検討を行っていますが,本人確認の状況やその遺言を遺す理由や当時の遺言をした方の健康面などの状況が公正証書遺言作成当時の本人の特徴と一致するのかなどの点を検討しています。

 結論に至る過程では様々な事情を総合考慮していますが,先ほど触れた自筆証書遺言でも触れたところの様々な事情を総合考慮(もちろんケースにより中心となる事情は異なりえます。例えば,医療記録その他から自筆で書くことが難しい・相当手が震える状況の方が不自然にきれいな字で記載している場合などはこの事情)して考えることになります。作成経緯や内容に特に問題がないことも問題になるので,無効を争える(なりすましや偽造)かどうかはこれらの事情を考慮して考える必要があります。

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