亡くなった方が負債が多いなどする場合に相続放棄を考えることはあると思いますし,他のコラムでもそこで問題になる事項(期間の経過や法律上相続放棄ができなる事情)は触れてきました。法律上相続放棄ができなくなるとされている事情(単純承認事由)のうち,相続財産を処分することにどこまでが該当するのかは難しい問題があります。亡くなった後の葬儀や墓石建立をするかどうか・住んでいた家の処分や契約解除・荷物の処分等が問題となる可能性があります。
ここでいう相続財産の処分は相続放棄の申述手続き(亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる)の甘えになされたもので,評価が伴いますが相続放棄手続きを認めないだけのものである必要があります。遺産を売却する場合や亡くなった方が生前売約することになっていた財産を完結させ登記を移す・引き渡すのが該当するのは問題がありません。特に亡くなってすぐに行う葬儀やお墓の費用が問題となります。
葬儀にかけた費用や墓石購入の費用の金額面の話もあり,一般論としてどうかという点では難しい話もあります。
裁判例の中では,葬儀費用やb穂積購入費用に亡くなった方の預金を解約して使った場合にも先ほど挙げた「処分」には該当しないという判断をしたものもあります(大阪高裁平成14年7月3日決定)。このケースでは決定文を前提にすると,300万円尾預金を解約し,葬儀費用などとして270万円余り・墓石購入と仏壇購入で100万円程度をそれぞれ支出したというものです。その後相続放棄の申述を行った(亡くなった方の負債が分かったのが支出後であるというもの)という事実関係の下で,1審が相続放棄を認めなかった・「相続財産の処分があった」ということを理由にするもの,を2審では「相続財産の処分」にはあたらないとしたものです。
その理由として,葬儀は亡くなった後に急いで行う・社会的に必要な行為であることや相当額の支出を伴うものであることを理由としています。このケースでは270万円余りの支出が肯定されたので,ここまで認められるのかという気もするところですが,相当額の支出はせざるを得ないという点もあげられています。最近は小規模の葬儀が多くなっていますが,実際には相当額の当然支出する範囲であれば問題がないという話になります。墓石仏壇の購入については,通常の慣例である事柄(一家の中心である方が亡くなった場合)・亡くなった方の負債が分からない状況で財産がある場合に不相当に高額ではないお金を出しての購入は自然な行動であって明白に相続放棄ができなくなる事情ではないとしています。
負債があることが分かっている場合には金額によって同じと考えられるのかどうかというところが気になるところではありますが,大きな支出(このケースでは購入費用が遺産や香典では足りず相続人が不足分を穴うめしています)の場合には相続放棄が認められないリスクがあります。相続放棄を認めるのが相当ではないというのは評価の側面がありますが,社会的な儀礼などの面は判断に難しいケースも出てくることがありえます。
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