法律のいろは

親が締結した死後事務委任契約を子ども(相続人)は解除することができるのでしょうか?

2022年10月19日 更新 

 通常子供がいる場合に,死後の葬儀薬用その他さまざまな管理を任せることができる死後事務委任契約を締結することはそこまで多くはないかもしれません。しかし,亡くなった方が生前死後事務委任契約を他の方に迷惑をかけないために締結していた場合に相続印が契約解除をできるかは問題になりえます。

 死後事務委任契約も委任契約なので本来委託した方が死亡すれば法律上委任契約は終了するのですが,それではこうした契約をする意味がないという問題があります。また,相続人は亡くなった方の地位を引き継ぐので契約を自由にできる(解除もできる)のが原則ですが,それまで亡くなった方とかかわりが少なかった相続人がいきなり契約を知らない・解除するといわれても問題は出てきます。ちなみに,原則は委任契約は委託した側はいつでも解除可能とされています。

 

 裁判例の中には,生前2つの死後事務委任契約が締結され,それとは別に遺言によって祭祀承継者(遺骨やお墓などの引継いだ方)が指定されたケースで祭祀承継者とされた方からの死後事務委任契約の契約解除を制限するべきであるとした裁判例(このケースの事実関係に即した判断,東京高裁平成21年12月21日判決・判例タイムス1328号134頁)があります。このケースでは,判決文を前提にすると,2つの死後事務委任では葬儀や永代供養などを委託しその供養料としてお金の支出をしたというものです。後に祭祀承継者になった方が,これらの契約が実現できないものであるから不成立・無効となる等の言い分をもとに供養料の返還を求めたというものです。

 争点は,実現できないものだから不成立と言えるのか・無効等の理由があるのかどうか・解除などの理由により終了したといえるのかどうかという点です。

 

 解除や委任契約の終了については先ほど挙げた法律の規定が存在するものの,判例(最高裁平成4年9月22日判決)によって死後の事務委託などの契約では委託した方の死亡後も継続する合意が存在するものと考えられ,法律の規定もこの合意を排除できないとされています。次に不成立と言えるかどうかという点は契約が2つ存在することとのその内容や遺言で供養を行うことも含む可能性のある祭祀承継者を指定したことで該当するのかなど(実際の事実関係は少し複雑です)の点が問題になりました。簡単に言えば内容や経緯から見て矛盾するから撤回あるいは実施不可能とは言えないとしています。

 そのうえで,委託側の相続人が契約解除をできる場合について,契約内容が不明確・実現困難,委託者の相続人といった委託者の地位を引き継いだ方の負担が重い等契約内容が不合理と言える事情がない限り,解除を許さない趣旨の契約であると解釈しています。そのうえで,このケースでの事実関係から,解除を許容するだけの事情があるのかどうかを検討し結論として,契約解除はできないと判断をしています。

 

 ここでは,死後事務委任契約の契約を行った点を踏まえての契約解釈を行っており,別に契約上の項目を設けた場合には,そちらの合意事項が優先されることになると思われます。したがって,死後事務委任契約の中で事由に委託者の相続人が契約解除などを行うことができる条項を入れておけば解除はしやすくはなるでしょう。もっとも,関与がない相続人が自由に契約解除ができるならば契約をした意味もなくなるので,どうした場合にできるようにするのか・そもそも後でトラブルにならないように死後事務委任契約や遺言を調整しておく必要があります。

 

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