法律のいろは

亡くなった方の営む会社で従事していたことは遺産分割で「寄与分」として考慮されるのでしょうか?

2022年10月27日 更新 

 相続において,「寄与分」が問題となるのは遺産分割での話の中です。「寄与分」自体は相続人の中における「特別な貢献」を遺産分割における考慮要素とするものですが,相続人の間で争いがある場合は最終的には裁判所が判断をすることになります。他のコラムでも触れていますが,そのハードルはかなり高いです。そもそも,「寄与分」の有無や内容が問題になる場合は,相続人の間で争いが生じている場面ですから,このハードルの高さは頭に入れておく必要があります。

 

 問題となる「特別な貢献」のタイプには療養看護・扶養・財産管理や金銭出資・事業貢献などいくつかのタイプがあるものとし整理されています。今回タイトルとして取り上げている亡くなった方が営んでいた会社での実質経営を行う等の貢献が「寄与分」として考慮されるのかという点は基本的には難しいという話になります。これは,亡くなった方の財産の維持・増大への貢献はあくまでも事業の手伝いという意味合いでは,その方の個人事業ということになります。会社と個人とは別(これは法人なりでも基本的には同じ)なので,ここが大きなハードルとして存在します。個人事業についても当てはまるところですが,通常は事業手伝いを無償ですることは考えにくく,給料名目のお金や会社であれば役員報酬などの給与をもらっていることが多く,このことがハードルとなります。事業に深くかかわるほど,その方自身が生活費をどこで得ているのか・普通はその偉業から得ていないと保管で収入は得られないだろうからということで,ここのハードルは当然問題になっていきます。

 特別な寄与というには,特別な貢献といえるだけの事柄を行っている・無償と評価できる状況・永続的な貢献が行われている・財産が増えた減らさずに済んだといえるだけの状況が存在し,貢献によって生じたものと言える,必要があります。給与などが貢献に見合ったものであれば,無償とは評価しにくくなるので,特別な寄与とは言いにくくなる可能性があります。

 

 特別な貢献といえるだけの貢献ということ自体にも相当程度のハードルが存在します。個人事業の場合であっても,実質引退している亡くなった方の事業を代わりに行い,その生活費を賄うだけでなく大きな財産を導き出した等の事情がないと言えないと,特別な貢献と剤s難お維持拡大の結びつきも言いにくくなります。要は,一つ一つのハードルが高いこともあり,寄与分が認められるケースはかなり限定されます。同様のことは,療養看護や財産管理の場合にも当てはまり,専門的な介護サービスを受けずに済んだ・そのことによって費用が節約できたとはっきり言える程度までの状況がないとハードルのクリアは容易ではないように思われます。

 

 後半はわき道にそれましたが,個人事業の手伝いや代わりに実質行ったという場合にもハードルは高くなります。そもそも亡くなった方個人とは別の存在である経営する会社の経営などを実質行ったという場合には,前提を満たしていないということから,中々話は難しくなります。仮に亡くなった方が生前に世話になっている方に多くの財産を残したいと考えるならば遺言を遺すことが有効です。その後の対立が予測される場合には,判断能力などの点で遺言の有効性が問題にならないように,注意をしておく必要があります。財産管理の面も任意後見契約・民事信託契約などが存在しますが,やはり後々のトラブルリスクを考えておいた方がいいでしょう。

 

 

 

 

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