法律のいろは

高齢者向け身元保証サービスを利用するうえでの注意点とは?

2022年11月16日 更新 

 高齢となった方で特に身寄りのいない方や身寄りがいても疎遠な方について,病院への入院や介護施設などの入所の場合に「身元保証人」を要求される場合があります。というか多いのではないかと思われます。利用代金の未払いへの対応や何かあった場合の対応・荷物の引き取りなどへ対応してもらえる方への需要というものはあり,ここに対応してもらえる「身元保証人」へのニーズというのは間違いなく存在するものと言えるでしょう。そうはいっても,頼りになる身寄りがいない場合には費用を払って「身元保証人」のサービス提供をする事業者が提供するサービスを利用せざるを得ないこともあります。

 ちなみに,内閣府の政策会議等に一つである消費者委員会が平成29年1月に出した建議(「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についてのの建議」)の中で,法令や設置基準の解釈として,病院・各介護保険施設では「身元保証人」がいないと利用拒否ができる正当な理由にあたらないと記載しています。ここを根拠に「身元保証人」がいなくても問題ないはずという交渉をすることは可能ですが,相手先が応じないことや時間をかけるところをどう考えるのかという点もあろうと思われます。この建議では「高齢者サポート事業」として「身元保証人」以外に在宅での日常生活支援や安否確認・亡くなった後の遺体引き取り遺品整理などの死後事務委任を挙げています。安心した利用と消費者保護の取り組みを建議しているところもあり,国民生活センターの発表している事項などからしても利用者の苦情やトラブルが起きている分野の一つと言えるかもしれません。

 

 各事業者の提供するサービスは先ほどの建議で挙げられていたサービス等様々で当然価格も事業者によって異なりますし,サービスによって異なります。中途解約などの際の取り決めその他も各事業者との契約によって異なりますので,実際に契約をする場合には,①どんなサービスが提供されるのか②預託金・費用がいくらなのか,預託金は同意多目的のものなのかなどお金の面③サービス・契約終了の際の清算がどのように行われるのか(ここもお金の問題という面があります),を注意しておく必要があります。何の契約をしたか分からない・言われるがままにしたけれども,不要なサービスや高額費用になっていたとなると,後でトラブル対応の負担を負うことになりかねません。身元保証安どのサービスはいわゆるBtoCの取引なので利用者の保護のための規制がありますが,契約条項の一部が無効になるのかどうか・記載事項の解釈がどうなのかといった点で交渉や裁判などが必要になるという煩雑さが存在します。

 ちなみに,無効となる可能性のある事項には,高額の初期費用を徴収し,契約終了時がいつであっても全く返還しない場合が考えられます。ただし,どう言ったケースで無効になるのかははっきりはしません。サービス内容は分からないままであるとなると必要と思った点をしてもらえず,不要と思う部分が残ることとなり,せっかくの利用が意味を持たなくなります。事前にきちんと説明を受けておく必要があります。その説明とは単に重要事項説明書などへ言われたままにチェックをするということではなく,きちんと契約内容を確認しておく必要があります。判断能力や健康面で問題が出てきた後となると,こうしたチェックが甘くなることもあるので,特に頼りになる身寄りがいない場合には早いうちから準備をしておく方がいいかもしれません。

 

 最後に清算の話ですが,先ほど触れた初期費用の返還の話もさることながら,特に身寄りのいない形について,事業者に残った財産を遺贈するという遺言は無効になる可能性もあります。もちろん,無効の主張をする方(それだけの法律上の利害を持つ方)がいないのではないかという話もあります。顧問弁護士に全ての財産を遺言で遺贈したケース(遺言者は判断能力が低下していたものの遺言をするだけの判断能力はあった事案)で孤独や健康状態などの問題があった中で,遺言内容を誘導したなどという理由から公序良俗に違反する遺言である⇒遺言・遺贈が無効と判断したケースがあります。事業者の場合とは異なる面はあるものの,判断能力や遺言に至った経緯・内容などを踏まえて同様に無効となる可能性はありうるでしょう。

 

 

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