法律のいろは

墓地の利用権の解除なく遺骨の撤去や改葬をされることはあるのでしょうか?

2022年11月25日 更新 

 最近「墓じまい」等墓地の利用に関する契約の精算とともに,遺骨の移転や墓地を移すための手続きの委託を受けるというサービスもあるようです。墓地の利用権は宗教法人・会社が営む墓苑であれ,墓地の利用に関しては契約締結をし,その契約内容に基づいて利用をすることになります。墓地の埋葬や改葬に関する規制はいわゆる墓地埋葬法によってなされています。この法律は公衆衛生などの観点から規制を受ける目的の法律で,この規制に沿った許可などを受ける必要があり,違反には罰則がなされることになります。

 

 この法律の規制をクリアすることは公の規制をクリアする・罰則を受けないことになるというのみで,墓苑の利用関係の契約はまたbうぇつ問題で存在します。利用契約が終了しない限りは,墓苑を利用する権利は存在しますし,仮に遺骨を移転し墓石を撤去しても利用に関する費用が生じる(月あるいは年毎の管理料など)ことがありえます。実際にどうなるのかは契約ごとの定める内容によりますので,契約書や約款(墓苑の管理規定など)の決まりによって決まるところです。

 

 墓苑を利用する側にとっては墓じまいをするにあたっては,利用権の契約の解約などを行う必要があります。この際にいやゆる原状回復(墓石の撤去等)の費用以外の費用請求を契約上設けられるのかは認められるとする見解と反対する見解(須要否者保護の規制から無効になる可能性を述べるもの)が存在します。

 逆に,墓苑側も利用権の解除や解約をすることなく,遺骨を移す・墓石を撤去することには問題が出てきます。いわゆる「無縁仏」(例えば,孤独死をした方で身寄りもない場合など)の改葬手続には墓地埋葬法や関連する規制で手続きが規定されています。この規制の詳細は触れませんが,亡くなった方の縁故者などが申し出るよう官報に公告をするなどの手続きを経たうえで改葬許可を経ること等の手続き規制が設けられています。

 この規制をクリアすることで,「無縁仏」を改葬することの公の規制をクリアすることはできます。ただ,民事の契約を規制するわけではないので,この規制のクリアをすれば墓苑側が契約解消をせずに勝手に遺骨を動かす・墓石を撤去できるわけではない点には注意が必要です。この点について,高松高裁平成26年2月27日判決LEXDB25547392  では,判決文によると,永代使用権に基づき墓を建立していたところ,その後墓苑を運営する宗教法人から墓地埋葬法に沿った改葬の手続きによって,「無縁墳墓」等の対応として墓石撤去と遺骨を移す(改葬)がなされたものです。これに対し,祭祀承継をする権限をする方から宗教法人に対し,利用妨害の停止や骨壺の引き渡し・損害賠償請求などを求めたケースです。1審では,引き渡しの対象が特定されていない・利用者の親族に連絡を試みても連絡が取れないことはやむを得ないから賠償責任も負わない・利用妨害の点は改葬をしても利用することは可能ということから妨害とならない等と概略判断し請求を退けています。

 これに対し,2審は妨害があること(妨害をしてはならない)・損害賠償請求自体は認めています。後者について,事実認定で墓参をしている形跡を認め,それを前提に使用者がいるのかなどの調査を尽くす義務とそれを怠っていたことから賠償責任を認めています。前者は裁判などでの墓苑運営者側の言い分(使用権の消滅・信頼関係破壊によって利用ができなくなったなど)等から妨害を認めています。

 

 通常利用ができなくなることの認識なく墓石撤去や遺骨を移すことはないでしょうから,妨害には当たるのではないかと思われます。また,契約上の義務はあくまでも改葬の規制とは別のものなので,規制をクリアすれば調査を尽くしたとは当然には言えないでしょうし,墓参や清掃がなされている場合には親族など祭祀承継者・使用者がいる可能性はありうるので,墓苑運営者側としては慎重な対応が特に求められるかもしれません。とはいえ,墓地の権利を祭祀承継等で引き継いだ側も墓苑側とトラブルに陥ってもあまり意味がないように思われますので,きちんと届け出などはしておいた方がいいと考えられます。

 墓苑の利用権も賃貸借に似た側面があり,契約によるとは言え信頼関係を壊す言動の積み重ねは契約解除を正当化する可能性はありうるところです。言い換えると,解除⇒撤去に至る可能性が出てくるでしょう。

 

 

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