法律のいろは

亡くなった親族の遺品整理をした後に相続放棄を行うことは可能でしょうか?

2022年12月4日 更新 

 賃貸物件やその他所有物件に住んでいる親族が亡くなった倍に,前者であれば大家から後者であれば自発的に亡くなった方の「遺品整理」をすることがありえます。遺品整理の対象になるものは高価なものもあるでしょうが,形見分けなどを除けば不要と思うものが多くを占めるかもしれません。特に賃貸物件の孤独死の場合には,そのことについて大家側から損害賠償請求がなされるケースもありえますが,遺品をどうするかはその際に相続放棄をするかどうかを含めて考える必要があるでしょう。

 

 別のコラムでも触れてはいますが,相続放棄は制限期間内に家庭裁判所に申し立てを行うことで最初から相続人出なかったことになる手続きです。プラスの財産もマイナスの財産(負債)も引き継ぎません。ただ,一定の事柄があった場合には相続放棄ができない(つまり,財産も負債も引き継ぐ)ことに当然になる事由が法律上準備されています。その中に亡くなった方の財産を処分することが含まれています。これは,遺産に属する財産の処分はすべて引き継ぐことを前提になされる行為なのだから,引継ぎ前提とみられる行為をするのは引継ぎの意向があるものと周りから信じられるからとされています。

 全ての財産処分がここでいう「財産の処分」で当てはまるとして相続放棄ができないのかという点は一応裁判例は分かれています。古い判例ではたとえ形見分けであっても当てはまると判断したものがあるのに対し,比較的最近の裁判例の中には(例えば,東京地裁平成21年9月30日判決),経済的に重要な価値のない形見分けのようなものという意味での処分は当てはまらないと判断しています。どこまでが経済的に重要でないのかという点の判断が難しい点はありますし,ご自身にとって不要であったとしても経済的・一般的に見てある程度価値があるとみられる物品の処分の場合には該当しないだろうという問題点は残ります。

 

 遺品整理は不要物の処分や買取(市場価値がある場合)・清掃(ここにはケースにより特殊清掃と呼ばれる孤独死の場合の対応がありえます)を行う業者が多いように思われます。買取が行われる場合にはケースによってそれなりの価値がある(そもそも経済的な重要な価値がないのはどこまでなのかという問題があります)点は留意が必要です。また,遺品整理の費用を亡くなった方の財産(預金など)から使った場合には財産処分になる可能性は相当程度あります。遺品整理の内容によりますが,特殊清掃などが含まれる場合には相応に費用がかることになるでしょうから,その支出は経済的に重要ではないお金の支出とは言いにくくなるためです。基本的には相続放棄を考えている場合にはかかわらない方がいいと個人的には考えますが,仮に行うとしても一般的な不要物の処分をご自身の費用で行う程度で行う方が安全と思われます。

 このほか,遺骨の引き取りなどの問題も出てきます。遺骨も権利を引き継ぐ人がいればその方の所有になりますが,こちらは「祭祀承継者」と呼ばれる方が引き継ぐことになります。相続人にあたれば当然に該当するのかと言えばそうではなく,問題がある場合には家庭裁判所の手続きで解決されることになります。「祭祀承継者」に該当することになれば,遺骨の権利を放棄することはできませんし,勝手に処分をすることはできません。処分をすれば遺骨遺棄罪という犯罪になります。ただ,特に孤独死があり少し遠い親戚が相続人になる場合に当然に「祭祀承継者」とは言えず,先ほど触れました家庭裁判所での手続きでの解決が必要になることもままあるのではないかと考えられます。その際には引き取り義務があるのかもはっきりしないでしょうから,引き取り拒否をした場合に引き取りを強く求められにくいと面のあるのではないかと思われます。相続放棄をするかが大きく問題になっている際には特に該当するでしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。