法律のいろは

相続人にお金を貸している方から遺産分割に関する財産処分の禁止をされることはあるのでしょうか?

2022年12月11日 更新 

 亡くなった方へ貸金などの権利を持っている場合は,相続人が原則相続分に応じて負債を引き継ぐので,遺産や相続人からの回収を図ることは可能です。これに対して,相続人に対して貸金などのお金を回収できる権利を持っている側にとっては,遺産として何をその相続人の方が引き継ぐのかによってお金の回収のしやすさが変わってきます。引き継ぐ遺産が不動産であれば登記でわかるので回収の見通しがある程度たちますが,預金の場合には引き出し可能なうえ当然に判明するわけではないので回収に問題が出てきます。なにも引き継がないような遺産分割の場合には当然回収面での問題が出てきます。

 そのため,遺産分割に関するその相続人の権利を代わりに行使する(つまり,遺産分割の申し立てを貸金などを持っている側)ニーズが出てきますが,見解上は否定する見解もありますが,相続分は譲渡可能であることなどを根拠に認める見解が一般的でそれに沿った裁判例も存在します。遺産分割を求める場合には沿相続人を含めて誰も遺産分割を求めない場合になるでしょうが,代わりに権利行使をするにはそれだけの必要性が存在しないといけません。通常はその相続人に支払い能力がなく,遺産分割を行うことでの回収を行う必要性があることになるでしょう。

 

 そして,遺産分割の申し立てを行う場合には,場合によっては話し合いがつくまでに遺産の一部である個別の財産が処分されないように手続きをとる必要が出てくる場合が出てくるかもしれません。遺産分割の審判が出るまでに処分される等の事情が具体的に存在し,守られるべき権利が存在することが法律上要求されます。

 面倒な点は,ここでの緊急的な判断はあくまでも遺産分割に関してのものであって,守られる権利も遺産分割に関する権利になります。予め処分されないことで遺産分割での取得する権利を守るということです。相続人の方に対するお金を回収する権利ではなく,遺産分割の中でその相続人がその個別の財産を取得する蓋然性があることをきちんと示さないといけなくなります。同様の観点から判断を示した最近の裁判例として,東京高裁れ話3年4月15日決定(家庭の法と裁判41号93頁)が存在します。このケースは,決定文からは相続人の方に別の裁判でお金を請求できる権利があることが確定した方が,遺産分割の審判前の保全処分(遺産分割がなされるまで遺産の一部である不動産の処分を制限)の申し立てがなされ,結論として,認めなかったものです。

 ここで認めなかった理由は緊急の判断を求めるために必要な,守るべき権利が存在する蓋然性を示せなかったためです。対象となる不動産をその相続人が単独で取得できるかどうかは他の相続人の意向や代わりのお金を支払えるのかなどはっきりしていない(権利保全の必要性があるということはその準備ができないリスクはその相続人には存在することもありえます)点は大きなハードルとなりえます。

 

 ちなみに,遺産分割によってその相続人の方が何も取得しないこと等によって,権利を持った方がお金の回収をできない場合には状況によっては,遺産分割によって得たお金を戻さないといけなくなる場合もありえます。こちらは,代わりに権利を行使するという話ではなく,権利を持った方の権利・回収を不当に奪った場合に,その原因となった行為の効果を否定する制度によるものです。したがって,遺産分割によってどうせ回収されるからできないようにするという話にはハードルが存在する点には注意が必要でしょう。

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