法律のいろは

無断出金の有無や損害賠償請求が問題となるケースでの注意点

2022年12月16日 更新 

 いわゆる使途不明金の問題の中には贈与の有無やお金の管理の有無・勝手に出金をした,出金依頼に反して多く出し一部あるいは全部を自分が使うということで問題となるものがあります。議論の詳細や裁判運営の関係は裁判官が書いた文献などにも書かれていますが,今回は簡単にこの問題の一部を触れておきます。

 

 この問題には,そもそも使途不明金をつくったと疑われている方が実際に管理やお金の引き出しであれば引出に関与していたのかなどという点が問題になります。管理や引出に関わっていないというのであれば,請求する側で示す必要があります。お金の動きで出金があった時期に近接してその方の口座に近似する金額が動いている場合には関与をうかがわせる根拠になります。特に同一金融機関の同一の視点であればその可能性は高くなるでしょう。

 窓口の払い戻しで誰かがかかれていればそれは大きい要素ですし,ケースによっては筆跡なども意味を持つこともありえます。これに対しATMであれば,民事事件でだれが出金(操作)をしたのかを示していくのは難しくなります。こうした払い戻しを周辺の事情から考えていくうえで,その通帳や印鑑・暗証番号・パスワードなどを誰が管理していたのかも当然大きな意味を持っていきます。特に,口座の名義を持っている方本人が当時健康状況が悪く,一人で引き出しなどが行えない場合には,そのご本人以外で管理している方の引き出しが強く推測されるためです。生活介助などが必要なのか・管理状況がどうであったのかはポイントの一つ与なりえます。

 

 引出に一定程度疑われている方が関与している場合に,関与の程度や内容・口座の名義を持つ方の本人確認がなされ払い戻し書類を誰が書いたか(窓口の場合)等の話が問題になります。関与の程度が強く実際の手続きは疑われている方が行っている場合には,どういう経緯からそうなったのか・引き出したお金はどこに行ったのかなどが問題になります。この場合にはどこに行ったのかは積極的に示す必要が出てくるでしょう。引き出したお金の行方について名義人本人に渡した場合にその使途などを疑われている側で,積極的に関与している場合には示すべきという見解(判例タイムス1414号・85頁)も存在します。全く使途も不明で多額のお金を渡していたというのはあまりに不自然な面は確かにありますので,その意味での影響はありうるでしょう。主に事実認定がどのようにされるのかという問題になります。

 引出をしたのが疑われている方であった場合には,当然その方が同意をしていたのか・無断であったのかは重要な話になります。無断であれば勝手に使っていることが通常ですから,全て返金という話になるのに対し,承諾があった場合にはそうはなりにくくなります。もちろん,全体的な同意となると個別に名義人御本人のために使ったのか分からなくなるので,どういった使途であったのかは問題になっていきます。無権限の場合には名義人御本人のために使ったものでないとなると,使い込みなどに当てはまり返金すべきお金となります。

 全く金額の支出が使途の説明もないというのはあまり不自然ではある一方,特に親族の間では使途の個別の領収書を保管することや細かな記録をつけていないこともそうは不自然ではありません。もちろん,大がかりな買い物でかつ領収書などが残っていそうなもの(家の購入など)であるにもかかわらず全くないというのはかなり不自然ではありますが,どこまでがそうなのかはケースによるものと思われます。ただ,使途の説明は引き出しや管理に関わていた側からするのが通常でしょう。

 使途の中にはご本人のための費用・贈与・医師その他に関する費用等にあたるのかが問題になります。使途は疑われている側で説明をするのが通常なのは先ほど触れた通りですが,実際にそういえるのか・使い込んだものなどと言えるのかがここでの問題です。贈与については継続的に行うことは必ずしも多くはないと述べる文献(先ほど触れた判例タイムスに記載)もありますが,実際にはケースごとの事情や金額によるのではないかと思われます。大きな金額を繰り返し贈与ということはあまり考えにくく,自由に辞めることができるものですから,それなりの事情や理由が存在しない限りはそこまではないのではないかと考えます。

 

 いずれにしても,この種の話は管理状況や引き出した方・関与状況・使途など言い分や裏付けなど細かく問題となりえます。

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