法律のいろは

相続放棄をした場合に亡くなった方の死亡保険金を受け取ることができるのでしょうか?

2023年1月22日 更新 

 相続放棄は,相続が開始した時点(問題となる方が亡くなった時点)にさかのぼって亡くなった方の相続人ではなくなるという制度です。したがって,財産・負債ともに引き継ぐことが無くなります。亡くなった方が契約していた保険の死亡保険金(亡くなったことを保険事故として保険金が支給されるもの,保険金受取人と指定された方・約款上受取人とされる方に支給されます)も,その方が亡くなることを原因として支給されることから,この保険金も引き継がないのではないのかという点は気になるところです。

 

 相続税では,一定枠を非課税にしつつも「みなし相続財産」の一部として加算をすることになりますが,保険金の受取人の固有の財産(相続により引き継いだ財産には含まれない)になります。したがって,相続財産には含まれません。そのため,相続放棄をしたとしてもその方は保険金受取人となっていれば,保険金を請求して受け取ることは可能です。亡くなった方の債権者になる方は,この保険金に対して債権者だから支払いをしてくれということは言えなくなります。こちらは相続放棄をしたためで,相続放棄が認められない「単純承認」事由があることが示せない場合です。別のコラムでも触れていますが,相続放棄の申述手続きは「法定単純承認事由」である遺産の処分などを行っていないことまでは確定しないため,そうした事由があることを示せるのであれば,請求を行いつつその事情を示していくことになるでしょう。

 

 先ほどの話は最高裁の判例でも示されており,古い最高裁の判断(最高裁昭和40年2月2日判決民集19巻1号1頁)では,養老保険の受取人を「亡くなった方の相続人」と指定した場合に相続の対象にはならず,受取人の固有の財産となる旨を判断しています。このケースでは,相続の対象となるのではないのかなどとの主張を排斥しています。この判断を引用して,遺留分侵害の対象となる贈与や遺贈にならない(保険金受取人が固有の財産として受け取ることを前提)という判断をした最高裁平成14年11月5日判決民集56巻8号2069頁も同じ前提になっています。

 

 そのため,亡くなった方がいて,その方に貸金や賠償請求などの権利を持っている方は,相続人が相続放棄をした場合に,保険金を受け取るのはおかしいのではないのかと考え,そのお金から支払いを求めても,自発的に払ってもらうのはともかく,裁判所の手続きを使って回収を図ることはできない点(相続放棄について先ほど触れた単純承認事由があることを示すことができる場合には話が変わります)は頭に入れておく必要があります。

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