法律のいろは

遺産分割協議を行った後に遺言が存在することが分かった場合に,遺産分割協議に影響はあるのでしょうか?

2023年2月4日 更新 

 遺言が見つからずに遺産分割協議が行われてしまい後で遺言書が見つかるというケースがどこまであるのかという問題はあります。ただ,実際に起きた場合にどうなるのかという点を触れていきます。遺言書があっても後で別途遺産分割教護を行うことができるのかという問題もありますが,こちらは基本的には遺言書とその内容が分かったうえでの話になります。

 まず,遺言書でよくあると思われる「〇〇に相続させる」という遺言の場合,特に指定がなければ全ての遺産が・財産が特定されていればその財産はその方に当然に引き継がれるというのが最高裁判例の理解とされています。この場合には,本来「相続」する方以外の方は何の権利もないはずなので,遺産分割協議の内容がそこに踏み込んでいる(その財産を別の方が引き継いでいる場合など)ケースでは遺産分割協議はやり直すことになります。ただし,特定の財産について「相続させる」という特定財産承継遺言という遺言の場合には現在の法律では登記をしないと法定相続分を超えて取得する部分を相続人以外の方には主張できないとされています。実際にそうしたケースがどこまであるのかという問題はありますが,一度遺産分割協議がなされその後登記の制度がある土地や建物が転売された場合には,その不動産に関する権利の主張ができなくなる部分が生じかねません。この点は従来の判例の理解では当然に権利を取得しているため,権利主張ができるのが原則であった点が法改正により変更されたといいうるかもしれない部分と思われます。

 相続人の間ではやり直しになるとしても,こうした別の制度の影響をその時期によっては受ける可能性があるものといえるでしょう。

 

 これに対し,相続分の指定がされているケースなど他のケースでは別に考える部分も出てきます。遺産分割協議も相続に関する具合的な財産の取り分などを解決するための合意なので,一度取り決めたことが簡単に後で覆ってしまっては合意の意味を持ちません。もちろん,脅されたやむを得ず合意したとか・書類上は合意したことになっているが印鑑などを勝手に使われた(そもそも合意があったといえるかが問題となる場合)場合には取り消しやそもそも合意をしていないということが問題になります。それ以外には合意の前提とした事項に重大な思い違いがあった・判断に大きな影響を与える前提事項が抜けていたような場合に,取り消しができるかどうかが問題になります。遺言で相続分の指定がされているケース(例えば,子どもが3人いて本来1/3ずつなのに,2:2:1と指定されていたケース)でそうした重大な前提事項といえるのかどうかという点が問題となりえます。

 裁判例の中には,相続人が相続分の指定があってもそれと異なる合意をすることはできることを前提とするけれども,可能な限り遺産分割方法の指定がなされている場合にはその趣旨を尊重すべきと述べたものも存在します(最高裁平成5年12月16日判決・判例タイムス824号124頁)。このケースでは各相続人がどの部分の不動産を取得するのか割と明確に記載された遺言(ある土地のうちどの部分の位置をどの免責で相続するか)の存在を知らずに遺産分割協議がなされたものでした。この記載と相続人が遺産分割協議をする際に大きな影響を与えただろう事情から無効(現在では取消)をすべき事情があると判断しています。あくまでも,相続分の指定が遺言でされていれば当然に取り消しを後でできるだけの事情と判断したものではありません。遺言での記載内容と遺産分割協議を行う際での影響が高いものといえるだけの事情があるかどうかがポイントなので,遺言が後で見つかったから容疑がやり直しが当然にできるわけではない点には注意が必要でしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。