法律のいろは

相続の場面における財産分離制度とは?

2023年2月13日 更新 

 相続の場面で,相続人が引き継ぐ遺産と相続人自身の財産を分離し,遺産(相続財産)を清算する手続きとして「財産分離」という制度が法律上存在します。請求をすることができる方のタイプ(請求できる期間も異なります)に応じて2種のものがあるとされていますが,家庭裁判所に対して申し立てることで分離と清算をしてもらえるかなどの判断を求めるものです。この制度自体は活用例が極めて少ないようです。その理由としては制度の複雑さ・この制度を使うようなケース(相続財産が全体としてマイナスになっている場合)には相続財産の破産手続きが存在することが挙げられています。

 

 「財産分離」の制度は,遺産(相続財産)と相続人自身の財産が混じることで,債権者のお金の回収に不利益を生じさせないための制度となっています。そのため裁判例(最高裁29年11月28日決定・判例タイムス1445号83ページ)は,遺産に関する債権者(相続債権者)や遺贈を受けた側が回収リスクを抱えないようにするための制度ととらえています。財産を分離することで,遺産に関する債権者や遺贈を受けた側が先にお金を回収することができるようにする制度で,相続人が債務超過あるいはその恐れがあって,遺産を相続人が引き継ぎ財産が見汁ことで回収リスクが出ることが財産分離を家庭裁判所が命じるためには必要であると判断しています。

 裁判所の判断は法律上の要件を満たしていれば必ずされるというものではなく,財産分離を行う(遺産と相続人の財産を分ける)ことの必要性や合理性があると裁判所が判断した際にされるものと考えられています。

 

 この制度によって清算をされるのは,相続人の財産と混じらないようにされた遺産になります。遺産部分が清算をあされるという意味で似た制度として「限定承認」というものがあります。異なる点は,「限定承認」は遺産が全体としてマイナスの場合ですが,「財産分離」では,相続人自身の財産がマイナスである場合が想定されているという点があります。そのほかに,「限定承認」では,遺産に関する債権者や遺贈を受けた側は遺産からしか回収を図ることができないのに対して,「財産分離」の場合には,相続人自身からの財産からも回収を図ること自体はできるという点も異なる点となります。もっとも,相続人自身の財産が債務超過になっているか・その恐れがある場合が必要とされる以上は,実際のところ,どこまで回収を図ることができるのだろうかという問題があります。

 こうしたケースでは,相続人サイドからするとケースによっては自身の自己破産免責手続きの申し立てを考えるような場合と思われますが,「財産分離」の制度は遺産に関する債権者・遺贈を受けた側・相続人の債権者が家庭裁判所に申し立てを行う制度(期間制限があります)となっています。

 

 あまり使われている制度ではありませんが,このような制度もあるということでの紹介になります。

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