法律のいろは

死後離縁とは?その基準と最近の裁判例

2023年2月17日 更新 

 養子縁組は,離縁をできる場合が法律上定められています。その基本は合意によるものですが,無理な場合には家庭裁判所での調停などの話が規定されています。養子あるいは養親がなくなった後はご本人の一方あるいは双方がいなくなるので,離縁は無理ではないかという気もしますが,法律上は一方のみがなくなった場合の離縁について定めています。これによると,家庭裁判所の許可が必要よ規定されています。その趣旨としては,本来要親子関係は,養親と養子の個人的な関係が重要で生前はもとよりどちらか一方がなくなった後に,その関係が希薄化等して養親子関係を継続して互いに拘束するよりも,解消を認めたほうがいいのではないかというものです。ただ,道義に反する恣意的な解消は認めないように家庭裁判所がチェックをするということで許可が要求されています。何が恣意的なのかという点は問題になりますが,養子の幼い子供には養親は扶養義務を負う場合もありますが,この義務を逃れるためなどの場合があります。

 

 実際には,養親・養子のどちらかが死亡後に関係する方と生存している方の関係悪化などがあった場合に,死後離縁の申し立てが問題になることがあり得ます。その一例として大阪高裁令和3年3月30日決定・判例タイムス1489号64頁)があります。このケースは1審での裁判所の判断が恣意的な申立であるとして却下した判断を覆して,死後離縁の許可を認めたものです。決定文からうかがわれる事実関係の要約は,一族で会社経営をしている夫婦が娘婿となった方と養子縁組し,その後婿養子となった方と娘がさらに別の方と養子縁組をしたというものです。その別の方は元々の養親である夫妻の孫(要は別の子供の子供)であるということで,婿養子・その別の方ともに後継者として期待されていた(決定文によると,婿養子の方は後継者として稼働)という背景があるようです。

 このケースで,婿養子の死亡後,孫である方は婿養子の相続人となるとともに,元々の養親であるうちに一方がなくなったため,素子らについても相続人となっています。婿養子の方が元々の養親の相続人(子供という立場)になるので,代襲相続ということで相続人となっています。その後の路線対立から,生存している養親から亡くなった婿養子の方との離縁を求めたというのがこのケースです。新たに離縁をしても,既に婿養子を相続した部分や代襲相続をした部分には影響はありません。ただ,生存している養親の相続人(代襲相続人,婿養子について)の立場は失います。

 こうした相続人の立場をなくすという点が恣意的な離縁といえるのかが問題となり,1審は肯定して離縁申し立てを却下しています。これに対し,2審では①申し立てが真意に基づく限り原則は申し立ては許可②例外的に,申立を認めると社会一般から見て許容できない事態に至る事情があれば,不許可にするというのが許可が要求されている理由であるとして,①・②がどうかを判断しています。養親と養子の子の意見や利害対立が大きく,判断能力面で問題がないのであれば①が問題になるとは考え難くなります。このケースでも①は満たすとして,②の事情があるかどうかが大きく検討されています。②の具体例としては先ほど挙げた,養子の幼い子供の浮揚を免れようとしている場合が挙げられています。このケースでは,すでに相続で大きな遺産を引き継いでいるので,婿養子の養子には経済的に困らないこと・すでにその方と養親の関係悪化が存在する点を考慮しています。前提として,相続人の立場から外すことを考慮してるように読めますが,それでも挙げている前記2つの事情からみれば,社会的に許容できない状態にはならない(②の例外に当たる事情はない)と判断をしています。

 

 養子縁組に至る事情に人間関係の悪化などの事情があり(通常は何もなく死後離縁は考えにくいように思われます),影響を受ける側が大きく困窮することもないならば例外に当たりにくいということをいうものと考えられます。多かれ少なかれ相続などにかかわることが影響するかと思われますが,それだけで例外には当たらないということを示すものと言えるでしょう。

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