法律のいろは

亡くなった方の財産の運用や管理をしていたことは遺産相続における「寄与分」として考慮されるのでしょうか?

2023年3月3日 更新 

 亡くなった方の財産管理をその方の子ども(相続人になる方)が,任意後見・成年後見といった制度や契約により管理する場合,事実上管理している場合などに,出費をせずに済んだ費用や管理により得たものが遺産分割で考慮されるか問題になることがあります。特別の貢献という「寄与分」で修正されるのかどうかという話ですけれども,他のコラムでも触れているのと同様に,結論では修正要素にはならないことが多いものと思われます。

 

 「寄与分」といえるためには,継続して・無償で・特別の貢献を行い・遺産の価値が増える(出費が抑えられる)必要があります。成年後見や任意後見等の場合に,管理による報酬を得ているとなると少なくとも無償とは言えなくなります。また,相続税の申告など,例えば親の一方がなくなった場合に,残った親と自分で相続税の申告を行いお互いに税金が適法な範囲で低くするようにした場合には,結局自らの事務も行っているため,貢献とは言いにくくなります。そのため,「寄与分」には該当しにくくなります。

 

 投資信託や株式等の価格が変動するもの・配当などの収入があるものも口座管理を行うという面が出てきます。この管理が「と寄与分」となるかですが,どの銘柄を売買するのかという選択も管理や運用を任されている場合に(少なくとも成年後見では無理です)ありうるところです。値上がりする銘柄で売買を行い配当も入るようにしたという点が「寄与分」で考慮さえる運用や管理といえるのかという問題ですが,裁判例には消極的な評価(要は言えないと判断したもの)をしたもの(大阪家裁平成19年2月26日審判。LEXDB28131815 )があります。

 このケースでは,相続人によって,亡くなった方の介護に関する「寄与分」・株式などの管理運用などの「寄与分」を主張した点について判断をしています。その中で,介護に関する「寄与分」は認めたものの,株式等の管理運用などの「寄与分」は否定しています。その理由として,株式などの資産運用には値下がり・値上がりの可能性が存在するけれども,値上がりになった局面のみ貢献を主張するのは「つまみ食い」の言い分であるというものです。値上がりに載るように情報収集や判断を行った点が寄与ではないかという反論もありうるところでしょうけれども,市況の影響を受けてしまう(この点がリスクや不確実性とも言えます)点は否定できないので,なかなかにこうした運用管理が「寄与分」とはその性質上認められにくい面はあります。

 

 このほかに,賃貸物件の管理をしている際に,管理会社がいる場合には特段の貢献が考えにくくはなります。これに対し,家賃管理や物件管理をしている場合には,管理会社に対する出費をすることなく財産の維持などにつながっているといえる場合もあります。実際に財産の維持や増加がないと,「寄与分」は考えられません。この場合にどこまで評価されるのかは問題にはなりますが,参考になるものに,管理会社の手数料があります。ただ,いわゆるプロである管理会社の手数料がそのまま認められるとは限らず(幾分か減額される可能性),そこから一定の差し引きがありうる点には注意が必要でしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。