法律のいろは

相続人がなくなった後の特別縁故者による分与の申し立ては,その方がなくなった後も行うことが可能でしょうか?

2023年3月19日 更新 

 相続人も遺言もなく亡くなった方の財産は,財産管理のために相続財産管理人の選任が申し立てられると,清算と管理がなされます。相続人を探す公告(官報に記載)をしても現れず,清算後の残額が名凝る場合には「特別縁故者」とされる方が財産を分与する申立をすることが可能です。こちらは,期間制限があり,公告等の期間終了後3か月とされています。この分与の手続きは「特別縁故者」にあたるのかどうか・分与が「相当」なのかどうかを家庭裁判所の裁判官が判断することになります。特に後者については裁量の余地が大きくなります。

 

 自分こそが「特別縁故者」にあたると考える方(亡くなった方と親密な関係にあった方)が仮になくなってしまった場合に,その方の相続人にあたる方は,この申し立てができるのでしょうか?裁判例では,否定的な判断がされています。理由は,あくまでも申し立てをして判断されてから初めて具体的な権利が出てくるものであるからというものです。要は申し立てをしないままでは駄目であるというものです。そうなると,申立後にその方がなくなった場合も判断までは同じように何かしらの権利もないのではないのかという気がするところではあります。裁判例(今回取り上げる山口家裁周南支部令和3年3月29日審判・判例タイムス1500号・521頁やそれ以外の裁判例)では,申し立てた方の相続人が手続きを引き継ぐことを認めています。

 ただし,本来「特別縁故者」にあたるのかどうか・分与が「相当」かどうかを裁判所が判断することになりますが,前者は申し立てをした方に関してどうかという話になります。後者は本来は「特別縁故者」にあたるとして申し立てをした方と亡くなった方との関係で考えることになりますが,引継ぎをした関係で実際には申し立てをした方と相続人の関係なども考慮せざるを得なくなります。先ほど触れた裁判例でも,申立をした方の相続人に対して財産を分与することの「相当性」として,その相続人と申立をした方との関係等の事情や申し立てを引き継いで裁判所の判断に至るまでの「その相続人」の関与の程度などの諸事情を考慮して裁判所が判断するとしています。様々な事情を考慮して判断するため,必ずしも申し立てをした方の相続人が持つ法定相続分に従う必要がないとして,裁判所の判断に関する裁量がはたらく点を示しています。

 

 今回取り上げる裁判例での具体的な事実関係は審判における事実認定の内容に詳しく記載されていますが,ここでは詳細は省略します。亡くなった方の伯父」にあたる方が相続財産管理人の選任申し立てや一部財産の分与を希望する特別縁故者への財産分与の申し立てを行っています。この方が申立後に亡くなり,その相続人が引き継いでいます。また,亡くなった方の従姉妹が同様に申し立てを行っていますが,この方が分与の審判を前提にした贈与契約を亡くなった方の別の親族としていたという点で特徴があります。この親族がなくなった方と親しくしてはいたものの,期間内に分与の申し立てを行っていないという事情も存在します。

 このケースでは,先ほど触れた申立後に亡くなった後引継ぎができるのかどうかという問題のほかに,贈与契約をしていた点をどう考慮するのかという問題があります。それは,分与の申し立ての中で分与を「相当」とする事情として考慮するのかどうか・仮に考慮する場合には,分与する財産の面などで注意をする点はあるのかどうかという話です。特に,後者は財産の上乗せをするということになると,金額によっては実際には申し立てをしていない方に贈与によって分与をしたのと似たような結果になりかねないという問題も出てくるためです。

 審判では,贈与によって財産を独り占めしない点は分与を「相当」とする要素としては考慮の一要素となるものの,先ほど触れた問題もあるため,「相当性」の考慮の中で贈与を受けた側と亡くなった方の交流を申し立てをした従姉妹の方と亡くなったかとの交流と同視する・期間内に申し立てを行ったのと同様な上乗せはできないと述べています。そのうえで,申立の際の実情に即して分与と分与額を判断しています。

 

 このように,特別縁故者への財産分与を認めた趣旨や様々な事情を法制度の趣旨に反しないように判断した裁判例と思われます。事実関係に特殊性のある中で,見通しを考える際には,特殊な点があるほどに実際がどうかを専門家に相談もしつつ,考えたほうがいいかもしれません。

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