法律のいろは

今あるお墓から別の場所に移転するときの注意点とは?

2023年4月5日 更新 

 お墓の関係の業者の方からは、ここ最近新規のお墓設置よりも、墓じまいの話が多いと聞きます。少子・核家族化や、高齢化に伴って、遠方にある墓地に出向くのは不便・体調面などから難しいなどの理由から、今あるお墓は墓じまいをして、お墓参りする方にとって便利が良いところにお墓を移したいという話もよく耳にするようになりました。

 お墓を改葬するとなると、ご家族でよく話し合ってどこの墓地や納骨堂に移すか決めるようにしましょう。お墓参りの頻度が多い方が便利なところを優先するのが一つかと思いますが、それ以外の親族にとっても行きやすい・便利なところがいいという希望が出てくることもあります。話し合いをせずに勝手にお墓を移したりすると、他の親族から遺骨の引き渡しなどを求めてくることもありえます。また、改葬に係る費用がかかることも予想され(お寺へのお布施、墓じまいの費用、移転先の永代供養料・墓石代など)、負担をどうするかをめぐりトラブルになる可能性もあります。

 話し合いによりご家族でどこの墓地、納骨堂に移すかが決まると、今のお墓の中からご遺骨を取り出して、移転先の別の墓地や納骨堂にご遺骨を移すことになります。この手続きは法律上改葬にあたりますので、まずは今の墓地があるところの市町村長に改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を発行してもらわなければなりません。それにあたって今の墓地の管理者にご遺骨が埋蔵されている証明書、移転先の新しい墓地からは受け入れ証明書・墓地の権利証を発行してもらい、これらを添えて提出する必要があります。改葬許可申請書や埋蔵の証明書は亡くなられた方ごとに作成されますので、墓地管理者に帳簿を確認してもらい作成してもらう必要があります。

 もっとも、墓地管理が十分にされていないと帳簿が不十分なことがありますので、火葬場に確認しなければならないケースもあります。また、何十年も前のこと・対象となる方の人数が多くなると記録すらない場合がありますので、おおよそいつ火葬されたか記載して移転先の火葬許可証を発行してもらうなど、役所と交渉を行わなければならない場合もあります。

 墓じまいとなると遺骨などを取り出し、お墓を撤去しないといけませんので、今の墓地のご住職や管理者に魂抜きのご協力をしていただくことが必要です。ただ、長年墓地管理料の支払いをしていなかったり,これまでの付き合いが薄かったりすると埋蔵証明書の発行がスムーズにいかなかったり、離檀料を請求される場合もあります。この辺りは今の墓地のご住職や管理者と改葬が必要な理由など、よく説明し理解して頂くようにしましょう。

 近年は埋葬の形態も様々になり、樹木葬や海上への散骨といった希望も増えてきているようです。散骨は「墓地、埋葬等に関する法律」でいう改葬に当たりません。そのため市長村長の改葬許可は不要と考えられますが、今の墓地の管理者から法律上の改葬にのっとった手続きを取らないと対応しない(遺骨の取り出しができない)、散骨のときは「改葬の場所」の記載をどうするかといった問題が生じる可能性があります。この辺りは市町村の役所や今お墓のある墓地管理者との交渉などが必要になってきます。

 祭祀承継者になっている方や他の親族にとって負担にならない形でお墓参りができるよう、改葬の手続きがスムーズに進められるよう、必要な手続きについてあらかじめ検討しておくことが重要でしょう。

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