法律のいろは

不在者の財産管理を申し立てることができる方は,失踪宣告の申し立てをすることができるのでしょうか?

2023年4月17日 更新 

 生死不明の方がいる場合に,その方の財産をどうすればいいのか・その方へのお金の回収をどうするのかは難しい問題です。法律上,暫定的な財産管理の制度として「不在者財産管理人」の制度が存在します。また,法律上の一定のハードルもクリアした場合には,「失踪宣告」という制度も存在します。

 

 「不在者財産管理」の制度と「失踪宣告」の制度の一番の違いは「失踪宣告」が裁判所によってなされてしまうと,その方は亡くなったという扱いがなされ相続の開始などがなされるなど影響が大きな点です。いずれの制度も法律上は,「利害関係人」その他の請求により家庭裁判所が判断を行う制度とされています。「不在者財産管理制度」以外に,仮にその方の行方などがわからない場合を含めて財産管理を円滑に行おうと思えば,財産管理契約を締結しておくという方法もあります。ただ,報告などをだれに行えばいいのかという点で問題が生じることはありえます。

 先ほど触れた「利害関係人」の範囲が同じなのかどうかという点が問題になることはありえます。ここでの「利害関係」とは法律上の利害関係です。比較的最近に問題になったケースとして,死後事務委任契約などを締結した受任者(管理などを行う方)が委託した方の相続人について失踪宣告の申し立てをした際に,失踪宣告における「利害関係人」に該当するのかが問題になったものがあります(東京高裁令和2年11月30日決定・判例タイムス1486号28頁)。このケースでは委託者から亡くなった後の財産管理などの契約を締結し,受託者である士業の方が,委託者の死亡後に預金の解約などを行うことや所有している家屋を賃貸に出すこと等の管理を行い,そこから報酬をえることを内容とする契約のようです。委託者の相続人がいれば当然管理内容の報告などを行うとともに報酬請求をすることになります(相続人が委託者の立場を引き継ぐため)。

 「失踪宣告」の申し立てをせずとも,「不在者財産管理」やその中で「不在者財産管理人」から「失踪宣告」の申し立てをしてもらうというやや遠回りな方法もある中で,その相続人についての「失踪宣告」の申し立てを行ったものの,それが裁判所に認められませんでした。これは1審・2審とも同じで,その理由も,失踪宣告はとりあえずの財産管理ではなく,死亡扱いをして相続の手続きを進めるなど影響が大きいからそれだけ「利害関係人」の範囲は狭める必要があるからという趣旨の話を挙げています。また,そこでは単に契約上の義務や権利を持つ方は該当しないとされているため,何かしらの権利を回収する方は「不在者財産管理人」の制度をとりあえず利用することになるものと思われます。この制度を利用するにも,管理人の報酬などのための「予納金」(まとまったお金)を裁判所に申し立ての際に収める必要があります。そこまでするだけの理由があるのかという点が申し立てをするかどうかの判断のポイントになりそうです。少なくとも今回の裁判所の判断を前提にする限りでは,財産管理を行う側は「不在者財産管理人」の制度を活用することになるでしょう。

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