法律のいろは

遺言が無効かどうかが問題となるケースとは?(その⑦)

2013年5月22日 更新 

 公正証書遺言が無効になる場合の話について前回触れました。

 いかに,公証人が関与していても遺言が無効になる場合はあり得ます。

 

 公正証書遺言が無効かどうか争われる場合は

 

 ①遺言をする人に遺言をするだけの分別・認識する能力がなかった

 ②遺言内容を公証人に十分伝えられたとはいえない

 ③立ち合いが要求されている証人を十分立ち会わせているとはいえない

 

 が主な場合ではないかということは前回触れました。①についても前回触れました。今回は,②と③について触れていきたいと思います。

 ②については,法律上「口授」と呼ばれ建前上は,遺言をする方が遺言をしようと思う事柄を公証人に口で伝えることが必要とされています。遺言内容を公証人に十分伝えた(「口授」)と言えるためには,どれだけのことを伝えればいいのでしょうか?

 もちろん,一言一句正確に伝えるところまでは不要です。よく問題になる遺産の分配については,誰に・何をあげるのかが分かる程度であれば問題ありません。遺言をするにあたっても,通常素人が述べたままであっては,思っている内容が法律上意味のある遺言内容なのか・遺言内容が明確なのかその他を事前に検討しておかないと後で解釈は問題となる・意味のない遺言となる可能性もあります。実際のところ,公証人役場で,遺言をする方が公証人に遺言の内容を伝えて,その場で公正証書遺言が作成される例は少ないと思われます。普通は,事前に公証人の方と打ち合わせをして,公正証書遺言の原稿を作っておく例が多いです。

 このように,公正証書遺言の原稿を作っておく場合には,実際に公正証書遺言を作成する段階で,遺言者の意思確認をするのが普通です。事前に打ち合わせをしているのだから,よほどのことがない限り無効が問題になることがないのではと思われる方はおられると思われます。

 

 実際,公証人と公正証書遺言の原稿作成のために,事前に打ち合わせをしているのが遺言者本人の場合には,公正証書遺言書作成の時に簡単な確認でも,問題ないとされている傾向にあります。簡単な確認とは,「はい」「その通り」程度の口での回答があった場合です。事前に本人が打ち合わせをしていれば,簡単な確認程度という話でも問題はありません。さすがに,うなずくとか手を握る程度では,口で伝えたことにはならないと判断される傾向にあります。

 これに対して,親族など遺言者以外が事前に打ち合わせをしている場合には異なります。遺言者が,具体的な遺言の内容を話すことで公証人に遺言内容を確認しない限りは,口で伝えたことには原則ならないと判断される傾向にあります。ただし,遺言者が公正証書に署名できる場合には,法律上遺言内容が正確であることを確認した場合にあたるので,ある程度簡単な確認でも口で伝えたことになると判断される傾向にはあります。

 

 多く,公正証書で口で伝えた内に入らないのではと問題になるのは,公正証書作成の際の確認や打ち合わせ頃の遺言者の健康状態などに問題があった場合だと思われます。公正証書遺言を作る際には,打ち合わせや公正証書遺言作成の際の確認状況や遺言者の健康状態にも気を付けたいところです。

 ③やその他公正証書遺言が無効か問題になる点の補足は次回にしたいと思います。

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