法律のいろは

離婚と子供に関わるハーグ条約(その③)

2013年5月28日 更新 

 ハーグ条約について,2回ほど触れてきました。日本でも今年にも加盟が予定されているところで,既に外務省が試験的な動きを見せているようです。今回は,子どもの返還命令の続きです。

 

 ハーグ条約が,国際離婚にもかかわる可能性のある子の連れ去りがあった場合の返還手続きの話をメインとしていることは前回も触れました。

 中央当局による子どもの返還援助手続(子どもの返還がうまく本人ら同市で行われるように調整などすること)がうまくいかない場合に,裁判所による子どもの返還命令の手続きが行われるのが基本的な流れです。ちなみに,子どもの返還援助手続と子どもの返還命令の手続きは別のものですから,子どもの返還援助の手続きを申し立てれば当然に子どもの返還命令の手続きに進わけではありません。

 

 16歳未満の子どもが常居所地(基本的に普段暮らしている国になると思われます)から不法に連れ去られた場合には,基本的に子どもの常居所地への返還命令が出されることは,前回触れました。

 

 ハーグ条約では,例外として,子どもの利益を守るための返還拒否事由を定めています。それは

 ①子の連れ去り等から既に1年以上がたって,子どもが新しい環境に馴染んでいること

 ②申し立てをする親が,子どもの連れ去りの事前・事後に,連れ去りについて同意をした

 ③申し立てをする親が,実際に子どもの養育監護をしていなかった

 ④子どもを常居所地に戻すことが,子どもにとって精神的・肉体的に苦痛を与える,耐え難い環境に置く可能性が高い

 ⑤子どもが常居所地へ戻ることに反対していて,子どもの年齢などが十分発達していて,子どもの意見を重視すべき場合

 ⑥子供を常居所地へ戻すことが,子どもが今いる国の人権や基本的自由についての原則に反している

 ような場合です。

 

  日本がハーグ条約に加盟するかどうかの段階で,DVや子どもへの虐待があった場合にどうするのかという話があったように思われます。DVや子どもへの虐待の話は,①から⑥までの事情が存在するかどうかという判断の中で考慮されることになると予測されます。実際にどのように判断の際に考慮されるかは,制度の運用等によるところがあると考えられます。ただ,DVや子どもの虐待は事実が争われた場合に,証明をどうするのかという問題はあるように思われます。

 

 ハーグ条約の話は次回に続きます。

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