法律のいろは

遺言が無効かどうか問題となるケースとは?(その⑧)

2013年5月29日 更新 

 遺言が無効となる場合について,遺言をした方に遺言をするだけの物事の判断能力があるかどうか・自筆証書遺言,公正証書遺言それぞれで無効が問題になる場合について触れてきました。

 

 前回の積み残しである,公正証書遺言の無効が問題となるケースについて補足しておきます。

 公正証書遺言が無効かどうか争われる場合は

 ①遺言をする人に遺言をするだけの分別・認識する能力がなかった

 ②遺言内容を公証人に十分伝えられたとはいえない

 ③立ち合いが要求されている証人を十分立ち会わせているとはいえない

 ということであるのは,前回と前々回に触れました。主に問題となるのは,①と②の場合です。

 

 ③については,公証人が作成することもあって,実例は少ないのではないかと思われます。証人となる資格を欠いた方が,証人として遺言作成の場に立ち会うのが代表例です。通常は事前に確認をするはずです。

 証人の立会は,遺言内容を遺言をする人が公証人に伝える・公証人が遺言書を作成し,遺言者に確認する・遺言者が遺言書を確認後に署名押印する,という全ての段階で必要です。証人は二人必要となりますが,裁判例では,このうち1人が遺言者の署名押印には立ち会わず直後に立ち会ったケースでも,証人の立ち合いとして問題がないことがあると判断したものもあります。ただし,極めて例外的なものと考えた方がいいように思われます。証人が立ちあったからといって当然に遺言が有効になるというわけでもありません。

 

 ちなみに,証人となる資格のない方(特に遺言によって遺贈を受ける方)が遺言書作成の場に同席することは,公証人の方から拒まれることが多いと思われます。ただし,証人の立会がなされていることは当然として,こういった方が同席しても,遺言の内容が左右されることがなければ,遺言は無効にならないと判断する裁判例があります。

 

 遺言が無効であるとの判決が出た場合に,あとはどうなるのでしょうか?あくまで遺言が無効であることの確認を求める訴訟で,無効であることが確認されただけです。実際にはそうした点を含めての請求になるのがつようだろうと思われます。既に登記が移った場合には,登記をもとに戻す手続きが別に必要です。場合によっては,遺産分割を行う必要が出て,家庭裁判所に調停や審判の申し立てを行う必要も出てきます。自筆証書遺言が偽造されたものであった場合には,民事だけでなく刑事面も含めた対応(私文書偽造罪などの犯罪に該当することになるため,刑事告発など)が必要になってくる場合もあり得ます。このように,遺言が無効かどうか問題になる場合には,遺言が無効と裁判所に判断された後も色々な問題が起きてきます

 また,遺言の有効性の問題とは異なりますが,事前の準備や財産関係の調査状況などによっては以下に公正証書遺言であっても,記載されている事項の解釈が割れることもあります。公正証書を作るからというだけでなく,事前から調査及び意向がきちんと反映されるのかをきちんと打ち合わせておく必要があります。

 

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