法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その①)

2013年5月31日 更新 

 相続が問題となる際に,生前亡くなった方(特に)親から,一部の相続人は援助を受けたのに自分は受けられなかった・自分だけ援助の金額が少ないという話を聞くことがあります。

 こういったことが遺産分割の際にどう考えられるのかを触れていきます。

 

 法律上,特別受益と呼ばれるものがあります。これは,亡くなった方(被相続人)から生活費等生計を立てるためのお金をもらった(法律上は,結婚や養子縁組のためのお金も含まれます)相続人がいる場合には,他の相続人と取り分の調整を行うというものです。相続人の間のアンバランスを修正するための制度と言えるでしょう。

 実際に,どのように修正を行うかは後で説明していきますが,この特別受益を考えるうえでは,次のことが問題になります。

 ①問題にしている事柄が,生計を立てるためのお金をもらったということができるか

 ②他の相続人との取り分の調整を行う必要がないという亡くなった方からの意思表示があったか

 

 このうち,①については次回以降詳しく触れていきますけど,特に親族間での援助が扶養義務を超えた援助と言えるか等が問題となっていきます。ちなみに,相続人に対する生前贈与としては,遺留分侵害があったといえるものかどうかを考慮する際に,ここでいう「特別受益」に当たる贈与であったのかが問題となります。

 ②については,法律上,遺言等で亡くなった方(被相続人)が,他の相続人との取り分の調整を行う必要がないとの意思表示があれば,調整を原則行わないことになります。そのために,こうした意思表示があるかどうかで,アンバランスが調整されるかどうかに大きく影響してきますから,問題となります。ここでの話は,法令改正により結婚して20年が経過した夫婦間での居住用不動産の生前贈与が行われた場合には,調整不要という意思表示があったという扱いが原則という法令の規定が設けられました。贈与税の特例制度とは直接関係があるわけではありません。

 ちなみに,原則に対する例外は何か,ということですが,これは遺留分を侵害する範囲までは亡くなった方の意思表示は尊重されないということです。相続人の中でも特に身近な人に一定の財産を保障するのが遺留分の制度です。こうした制度があるのだから,亡くなった人の意向よりも優先しますということですね。

 そうはいっても,せっかくのアンバランスの調整がなされる幅が大きく変わりかねませんので,②も非常に重要です。こうした意思表示が遺言でしかできないかというとそうではありません。亡くなった方(被相続人)の生前の言動などから調整不要の意思が読み取れれば,調整不要の意思表示があったものと扱われる点には注意が必要です。ただし,意思の読み取りを何の文書もない中で行うのは難しい(そのため例外となる)ことを考慮しきちんと生前に対応をしておく必要があります。

 

 次回以降①と②について詳しく触れていきたいと思います。

 

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