法律のいろは

離婚後の生活について(養育費その⑪)~養育費の支払いが困難になったら?~

2013年6月5日 更新 

 少し前になりますが、養育費の支払いが滞った場合の対処法などについて、2回に分けてお話ししました。

 今日は、前に予告をしたように、子どもの養育費を支払っている親が、決められた子どもの養育費の支払いが困難にもかかわらず、給与が差し押さえられたとき、どうすればいいか?をお話ししたいと思います。

 ○ 養育費の減額申立

 たとえば会社の業績悪化や、新しく扶養家族が増えたという理由で一旦決めた養育費の支払が難しくなったとき、「事情の変更」といえれば、養育費の減額を求める調停(話合いが難しければ審判)により、養育費の額を下げることが出来ます。これは以前に触れたとおりです(離婚後の生活について(養育費その③)参照)。

 ただ、今回のように給与が差し押さえられてしまった場合、前回お話ししたように将来分も含め1/2まで差し押さえられてしまうこと、養育費の減額調停・審判によると時間がかかることからすれば、できるだけ早く差押額を少なくできる方法をとった方がよいでしょう。

 ○差押範囲変更の申立

 一旦された差押について、その変更を求めるには、「差押範囲変更の申立」を行うことが考えられます。これは、数か月分の収入や家計からみて、差押されると生活がやっていけない事情が分かる資料を添付して申立をすることで、一旦行われた差押の範囲を変えてもらうことができます。書式は裁判所のものがありますので、それを使って申し立てた方がよいです。

 この手続きのネックは結構な期間の家計収支表や各種公共料金の支払が分かるものなど資料をそろえる必要があることです。ただ、この申立によれば比較的早く判断が出るので、手間ではありますが、行った方がよいと思います。

○ (差押えの)執行停止

 たとえば、差し押さえの根拠になっているものが公正証書で、その作成のとき脅されて・あるいは騙されて養育費の額を決めたなどといった事情があるときは、その公正証書の内容について争う裁判(「請求異議訴訟」といいます)と合わせて、差押の停止を求める申立をすることが考えられます。

 ただ、この場合には、公正証書の内容を争って裁判で認められるかがかなり厳密に考えられます。仮に裁判で覆らない可能性が高いとなると、その間本来差押できたはずのものができなくなってしまい、損害が生じることになります。そのため、そういった場合の損害に備えて、通常は予め一定の金額を裁判所に納めることによって、初めて一旦差押を止めてもらうことが出来るのです。

 一定の金額がいくらになるかは請求金額にもよりますが、100万円単位の高額になることもそこそこあります。そのため、裁判所に納める金額の準備自体できない可能性が高いです。

 

 このようにみると、当初決めた養育費の額通り支払えなくなったことに事情があれば、差押の範囲変更の申立をまず行い、必要があれば養育費減額調停・審判の申立をするのが良いと思います。

 

   次回は、養育費の支払義務がある親が破産をした場合、養育費はどうなるのでしょうか?についてお話ししたいと思います。

 

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