法律のいろは

交通事故にあった事で仕事ができなくなった分の損害賠償はどうなるのでしょうか?(その⑦)

2013年6月8日 更新 

 交通事故にあって働けなくなった部分の損害賠償について,これまで6回触れてきました。

 前回まで3回自分で商売をしている事業者の方や会社役員の方の休業損害について,触れてきました。今回は,休業損害関係の補足についてです。

 

 前回・前々回と,個人事業を会社の形にしているだけの場合や中小企業の役員報酬が休業損害となるのかどうかについて触れました。繰り返しになりますが,中小企業の役員報酬が休業損害になるかどうかの判断は難しく,トラブルになるケースは多いように思われます。

 

 実質個人事業を会社の形にしているような場合に,役員・代表者の方が交通事故の被害にあえば,会社の営業への影響は深刻です。この影響を役員・代表者の休業損害以外に,会社が損害を被ったとして賠償請求できるのでしょうか?交通事故によって,会社に間接的な損害が生じたかという問題です。

 結論としては,実質個人事業を法人成りしているような場合や交通事故にあった方がいないと会社の業務が成り立たないような場合等しか,こうした損害は賠償請求できません。つまり,間接的な被害をこうむったからという理由での損害賠償請求は,例外的なものなのです。中企業の感覚だと当然こうした損害は認められるべきものという意識があるかもしれませんが,相当に限定されています。

 ちなみに,裁判例の中には,交通事故で亡くなった方の親族が葬儀等に出席する必要があって,仕事(ジャーナリスト・執筆業)を変わらざるを得なくなった場合に,そのことによる親族経営の会社の減収分を損害として一部認めたものがあります。この裁判例もまた例外的なものと考えられる点には注意が必要です。

 

収入が不安定な職種

 このほか,仕事の中には,収入が不安定な職種(代表例としてあげられるのは,タレントやホステスなどです)があります。こういった職種の場合には,賃金センサス(国がとった統計資料)を基準に基礎となる収入が考えられることが多いです。もっとも,収入額を客観的にはっきりさせる資料があれば,話は変わってきます。

 

学生など

  学生の場合は,無職の方も多いと思われます。収入がなければ,休業損害はないので,基本的には生じません。アルバイトなどで収入があれば,その部分に休業損害が生じることになります。もちろん,交通事故の被害にあった事で,就職が遅れた場合には,その遅れた部分について損害が生じることになります。

 

 以上のように,休業損害について簡単に触れるだけでも色々な問題点があります。次回から逸失利益について触れます。

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