法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その④)

2013年6月15日 更新 

 相続人の一人(特に子供)が,亡くなった方(被相続人)から,援助を受けていた場合に,遺産分割での取り扱いについて,何度か触れてきました。

 

 こうした援助を遺産分割において調整するものとして,特別受益と呼ばれるものがあることを述べました。特別受益に関わる問題点として

 ①問題にしている事柄が,生計を立てるためのお金をもらったということができるか

 ②他の相続人との取り分の調整を行う必要がないという亡くなった方(被相続人)から意思表示があったか

 があるのは,これまでも触れました。

 

 今回は①について,生命保険金(いわゆる死亡保険金)が,生計を立てるためのお金を貰ったと言えるかどうかについて触れてい行きます。

 

 以前,生命保険金(死亡保険金)は,相続財産に普通はいることはなく,受取人自身の財産になるという話をしました。ただ,保険料を亡くなった方が負担していたなら,その分は援助ではないかという考え方が出てくるのかもしれません。

 しかし,裁判例上は,原則として,死亡保険金は特別受益にはあたらないと判断しています。理由として,保険料はなくなった生前に保険会社に支払ったのに対し,保険金は亡くなった後に発生するものである等のことを考えています。

 

 ただし,裁判例では,例外的に特別受益と同じように考えて,遺産分割で調整する余地はあると述べています。その余地というのは,公平の点から調整しないと明らかにおかしいと言える場合であるということです。

 そういった場合にあたるかどうかとして,何点かの考えるべき点を,裁判例は挙げています。そうした点は

 ①保険金の金額

 ②保険金の額が亡くなった方(被相続人)の遺産の金額と比べてどの程度のものか

 ③保険金を受け取る方と亡くなった方(被相続人)が同居していたか

 ④亡くなった方(被相続人)の介護などに保険金を受け取る方がどの程度貢献していたか

 ⑤保険金を受取る方と他の相続人との関係

 ⑥各相続人の生活実態

 が主な点です。その他の事情も踏まえて,総合考慮して調整が必要となるか否かの話になってきます。

 つまり,①から⑥のうち,いくつ当てはまればいいかという簡単な話ではありませんがケースごとの話となってきます。既に別のコラムでも触れていますが,亡くなった方の死亡について,在職中の貢献に対しての後払いである死亡退職金(規定によりますが,相続人に対して支払うと規定されている場合を念頭に置きます)についても同様の性質が存在します。確定した最高裁の判断がないところで見解も複数存在しますが,同様に考えられるのではないかと思われます。

 ちなみに,死亡退職金も生命保険金も非課税部分はあるものの,課税の公平の観点から相続税の課税対象には含まれている点には注意が必要です。この特別受益で考慮されないのが原則である(遺留分の侵害の有無についても同様)・相続税課税の対象にはなるが非課税部分がある・キャッシュの確保ができるということから,生命保険を活用した相続対策はよく行われているかと思いますが,落とし穴となりうる要素はありますので,注意が必要です。

 

 

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