法律のいろは

スムーズな相続にするには?その⑥(~遺言書作成にあたり気を付けるべき点(4)~)

2013年6月29日 更新 

 前回、Q&A方式で自筆証書遺言を作成するときの注意点をお話ししました。今日はその続きです。

Q3:遺言書を作成したとき、間違って「平成25年6月1日」と書かなければならないのに、「平成2013年6月1日」と書いてしまったのですが…。

 前回も触れましたように、遺言書に作成した日付を求めているのは、

 ① 遺言書作成者がどこまで判断する能力があったかが問題になったときの基準時になるからということ、また

 ② 複数の遺言書が出て来たときに、後の遺言書が前に作成された遺言書より優先するので、どれが遺言者の真意なのか確認する  にあたって必要になるから

です。

 わざと遺言書を作成した日と異なる日付を書いた場合、そういった重要な日付を意図的に作って書いた遺言書を有効とすべき理由もないので、無効なものとなってしまいます。

 ただ、書かれた日が遺言書を作成した経緯などから明らかに誤記であることと、実際遺言書を作成した日付が分かるときは有効とされることもあります。

 裁判例でも上と同じようなケースや明らかに誤記と分かるケースで遺言書を有効としたものがあります。

 とはいえ、遺言書を作ったときの事情などから、実際に遺言書を作成した日付がいずれも分かることが前提になっているようです。ですから、たとえ記載からみて明らかに間違ったとわかる場合でも、いつ本当に遺言書を作成したのかわからないときはせっかく作った遺言書が無効になる可能性があります。

 

 遺言書に記載する日付の持つ意味の重要性をしっかり意識して、あとでもめ事にならないよう、最新の注意を払って遺言書を作る必要があるでしょう。日付の記載は必須ですからよく注意をしておく必要があります。「吉日」などという記載では日付を書いたという扱いにはなりません。

 

Q4:遺言書には押印がないのですが、遺言書が入っている封筒には押印があるものが見つかりました。こんな場合でも遺言書としての効力が認められるのでしょうか。

    遺言書に押印をすることが法律上要件になっているのは、遺言書の全文を自筆で作成するよう求めているのと同様、遺言作成者が作成したものであることを明らかにして、その真意によることを示すため、と考えられます。

 そうだとすれば、遺言書に押印がないのであれば、遺言書を作成した人が本当に作成したものと保障できず、無効なものといえそうです。

 裁判例では、遺言書そのものに押印がなくても、封筒に押印があり、遺言書と封筒が一体といえれば効力を認めるものもあります。法律上は押印がなされていればその場所までは指定されていないのでこれでもいいのですが,一体と評価されない場合には遺言書そのものには押印がなかったという扱いになります。

 仮に遺言書が封筒に入っていて、押印がされていたとしても、実際に遺言書を作成したときに封筒に入れたかどうか分かりません。もしかしたら、あとですり替えられている可能性もあります。ですので、本当に遺言書と封筒が一体といえるかは色々な事実をかなり考慮した上で判断をする必要があります。

 法律上、自筆に加え、押印まで要求されていることからすれば、それだけ遺言書の効力を認めるにあたって、慎重さを求めていえます。遺言書自体に押印がない限り、よほどの事情がないと原則として有効とするのは難しいでしょう。

 遺言書作成の際には、遺言書自体の署名の近くに押印をしておくのが、のちの紛争の火種にならずにすむでしょう。    なお,法律改正により導入さえました自筆証書遺言の保管サービスを使うのであれば,封筒に入れて封をした形での遺言書の保管はできない(対象外)となります。そのため,このサービスを使うのであれば遺言書自体の可能であれば署名近くに押印をしておくのがいいでしょう。

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