法律のいろは

スムーズな相続にするには?(その⑧~遺言書作成にあたって気を付けるべき点(6)~)

2013年7月4日 更新 

 前回、遺言書を作成する際、内容面で気を付けたいことをお話ししました。

 今日はその続きでお話ししたいと思います。

 ○遺言書で遺言執行者を定めておいた方がいいの?

  遺言執行者は、遺言の内容を適正に実行させるために選ばれた人で、遺言書で執行者を決めなければならない場合もあります。

  ただ、通常遺言書で書かれる、相続分や遺産分割方法の指定は、遺言書の効力が発生すると、遺言の内容が実現されるので、遺言執行者を決める必要はありません。

  時折あるのが、例えば遺言書により、特定の相続人に土地・建物と預貯金の一部を相続させたいが、病気がちで手続きを自分で行うのが難しい、そんな場合遺言執行者を決めておくのはどうか、というものです。

  通常遺言書で作成されることが多い、いわゆる「相続させる」という内容の遺言であれば、遺言者が亡くなったときに直ちに決まった相続人が特定の遺産を相続します。たとえば不動産を相続したとき、その相続人が自分だけで登記手続きをとることが出来ます。そうなると、遺言執行者がなにかを実行する必要はないと思われます。ただ、遺産を相続した相続人が登記手続きをしないうちに、他の相続人が自分に登記移転をしてしまったような場合、遺言の内容実現が妨げられてしまいます。そうならないよう、遺言執行者が、相続を受けた人の代理人として所有権移転登記手続きを行う必要も出てくるでしょう。

  また、他の相続人が勝手に登記移転手続きをとってしまった場合、遺言執行者が移転登記の抹消登記手続きなどの手段をとることができます。

  預貯金については、金融機関への払戻請求が遺言執行者の権限として認められるか、裁判所の判断でも分かれているようです。

  金融機関によって対応が異なるようで、事前に確認をしておく方がよいでしょう。場合によっては、遺言執行者を選んでいても、二重払い・相続人同士の争いに巻き込まれることを防ぐため、すべての相続人の同意を求める場合もあるようです。

  遺言執行者の権限として、何をしてもらうか具体的に内容が書かれていると、金融機関も遺言執行者限りで手続きに応じてくれることがあるようですので、スムーズに払戻請求などするためきちんと明記した方がいいでしょう。

  一見、遺言執行者がいらなさそうでも、遺言執行者を指定することで、相続発生後の手続きを最後までスムーズに行えるようになります。特に遺産が多い場合などは、遺言執行者を決めておいた方がよいでしょう。ただし,遺言の内容などにトラブルがある場合には遺言内容の実現に問題が出てくることや相続人の間の争いが大きな場合に遺言執行者が仮に専門職であっても対応に限界が出てくることもありえます。

  遺言執行者を指定しても、当然に遺言執行者に就任するのではなく、受けるかどうかは指定された人の自由です。ですから、指定する場合には、予めその人の承諾を取っておく方がよいでしょう。

  なお、遺言執行者を弁護士その他専門職に依頼したときには、通常報酬を請求することになります。報酬の決め方について、遺言書に金額などを書いておく・書いていない場合には家庭裁判所に報酬決定の申し立てをして決めてもらう等ということで結局報酬は生じるのが通常と思われます(家庭裁判所への報酬の申し立ては仮に相続人が遺言執行者になっていても同様ですが,すべて相続させるという遺言でもらう方が遺言執行者という場合には報酬の話は出にくいと考えられます)。遺言書に書いておいた方が、その後の相続人とのトラブルを防げますので、あわせて明確にしておくとよいでしょう。

 

  

 

  

  

  

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。