法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その⑨)

2013年7月22日 更新 

 亡くなった方から生前援助を受けた場合に,遺産分割でどう調整するのかについて何度か触れてきました。前回は,こうした調整を受ける生前贈与を受けた方の範囲について話をしました。相続人の配偶者等に援助をした場合にどうなるかという話でした。

 

 今回は,少し違う点について触れていきます。

 相続人の子どもに援助をする例はよくあります。たとえば,孫の学資保険の掛け金をかけてあげるとか・孫名義の預金をしてあげるという場合です。こうした場合も,前回触れた配偶者(相続人の妻や夫)に財産をあげる場合と同じように,原則は遺産分割で調整が必要とは考えません。実質は,相続人への贈与と同じように考えられる場合のみ,遺産分割で調整をしていくことになります。

 

 相続人の子ども,孫や甥や姪は代襲相続といって,それぞれ亡くなった方の子どもや兄弟が亡くなった方よりも早く死亡しているときなどには,亡くなった方の財産を相続することができます。先ほどの考え方からすると,代襲相続ということがあっても,亡くなった方から生前に援助を受けていても,必ず遺産分割での調整は不要ということになりそうです。

 亡くなった方の子どもや兄弟が死亡する前に援助を受けた部分については,問題なく先ほどの考え方が当てはまります。つまり,相続人の子どもへの援助なので,相続人の間での公平のために調整する必要はないことが原則になります。言い換えると,特別受益による調整は,相続人への生前贈与が遺産の先渡しの意味合いを持つので調整をしようという考え方に基づくものなので,相続人の子供への援助はそうした先渡しそのものではないからというものです。ただし,別のコラムでも触れましたが,財布も同じで実際には相続人自身に大きな利益を与えているという場合(そのように言えるかどうかは,個別の事情を評価していくことになります)には,その利益分については遺産の先渡し・相続人への贈与と評価することができます。この場合には,対応部分について調整はありえます。この場合は,相続人がその後亡くなったかどうかとは関係がありません。

 しかし,相続人が亡くなった場合(亡くなった方よりも早く相続人が死亡したケース)には,孫や姪・甥が直接相続人となります。この場合に生前贈与をすることはまさしく相続人に対する遺産の先渡しとなって,調整が必要という話がストレートに当てはまります。そのため,他の相続人との公平のために調整をしないと相続人の間で不公平がおきます。ですから,この場合には遺産分割で調整をする必要があります。

 

 生前援助が行われたのが,本来の相続人がなくなる前であるかどうかで結論が変わることになります。これはおかしいという考え方もありますが,一般的には先ほどの考え方に基づいて運用されています。

 

 次回に続きます。

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