法律のいろは

スムーズな相続にするには?(その⑩~遺言書作成後のアフターフォロー(2)~)

2013年7月24日 更新 

  前回、一旦作成した遺言書を作り直す場合についてお話しをしました。前回は主に「撤回する」と遺言書に記載をした場合のtことを書きましたが、今回は、法律上遺言の内容を撤回したとみなす場合についてお話ししたいと思います。

① 前の遺言と内容が抵触する遺言がされた場合

  

 たとえば最初の遺言書では、甲という不動産を相続人のうち、Aに相続させると記載していたのに、後で作成した遺言書では、甲をBという別の相続人に相続させるとした場合があたるでしょう。一つしかない甲を2人の相続人に共有させるのなら別ですが、そうでない(単独での相続)なら内容が抵触することになります。

 ですので、こういった場合、後の遺言書の記載とおり、甲はBに相続させることになります。

 ここでいう「抵触」という言葉についてですが、前の遺言の効力を否定しないと後の遺言の内容が実現できないほど内容が矛盾している場合をいいます。

 客観的にみて遺言の内容を実現することができない場合だけではなく、色々な事情からみて後の生前処分が前の遺言と両立させないような目的でされた場合(たとえば、100万円贈与すると遺言書に記載したあとに、あとで請求しないことを前提に50万円の生前贈与を受けたとき)も「抵触」にあたると判断した裁判例もあります。

 なお、遺言の内容が前したものと、後にしたものとで内容が抵触しなければすべての遺言が有効となります。裁判例で問題となっているのは複数ある遺言の記載内容や解釈面が問題になったものですので,「抵触」等に当たるのかで余計なトラブルを防ぐには内容を把握したうえで明確に対応をしておいた方がいいでしょう。

 

② 遺言と抵触する、処分などの法律行為が生前行われたとき

  たとえば、遺言書には、乙という不動産をCに相続させるとなっているのに、遺言書作成後Dに乙に譲渡してしまった場合があたります。

  この処分などの法律行為は、遺言者自身が行う必要があり、たとえば債権者が競売にかけた場合は撤回の効力は生じません(ただ、競売にかけられたりすることで、事実上遺言書に記載されている内容の実現が困難になることはありえます)。

  また、たとえば全財産を配偶者に相続させるとの遺言をしたあとに、その配偶者と協議離婚をしたような場合、当初の遺言の内容を撤回したといえるかが問題になりえます。

  養子縁組の場合で、修正面倒をみてもらうのを前提に、ほとんどの不動産を養子に遺贈すると遺言をしたあと、協議離縁をしたとき、当初の遺言は協議離縁と内容が抵触するので撤回されたとした裁判例があります。

  当初の遺言をしたときの前提から事情が変われば、前の遺言は撤回されたとみた方が遺言者の意思の尊重につながる場合もありうるでしょう。

  

  次回は、法律上定められた撤回の残りのケースについてお話しします。

  

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