前回、セクハラの加害者に対する請求についてお話しをしました。今回は、会社に対してどんな責任追及・対応を求めることができるかお話ししたいと思います。
加害者の行ったセクハラ行為が違法なものといえる場合、前回お話しをした、加害者に対する不法行為責任の追及のほかに、会社自体に対する使用者としての責任追及をすることが可能な場合があります。
会社に対して使用者としての責任を追及するには、加害者が行ったセクハラ行為が、「事業の執行について」、つまり業務と関連して行われる必要があります。業務と関連しているかは、外から見て、職務の範囲内と見えるかどうかで判断をします。
具体的には、加害者が会社でどのような地位にあるか、加害者と被害者の関係(上司か・同僚かなど)、加害者が職務上の地位を利用していたかどうか(たとえば、上司であることから職務命令の形で呼び出していたetc.)、セクハラ行為の内容・程度、セクハラを行った場所・時間などを考慮して判断していきます。
なお、法律の言葉の上は使用者が、加害者の選任・事業の金得に相当な注意をしたこと・相当な注意をしても損害が発生すべきだったことを証明すれば、責任を免れるとなっていますが、実際のところ免責されるケースはほとんどないようです。
使用者責任を追及する場合、加害者への請求と同じく、加害者及び損害を知った時から3年で時効になりますので注意が必要です。
以前お話しをしたように、雇用機会均等法上、会社(事業主)にはセクハラが起きないよう雇用管理の上で必要な措置を講じる義務が課せられています。
ですから、事業主である会社がセクハラが発生しないように予防したり、素早く対応しなかったために被害者に損害が発生したときは、会社自体に適切な対応などをしなかったことによる不法行為責任が認められる場合もあります。
裁判例でも、会社がセクハラ相談の対応窓口設置、セクハラを行ったものに対する懲戒処分などセクハラを実際起こらないようにするための強い措置をとるべきであったのに、対応を講じなかったことについて、良好な職場環境を整備する義務違反があったとしたものがあります。
また、やや特殊なケース(被害者と加害者が職務上24時間同じ生活の場)で、被害にあったあと、被害者が被害回復できるよう配慮したり、職場環境を改善する義務、性的被害を受けた者へ不利益が発生しないよう防止すべき義務を怠ったとして、対応の違法性を認定し、慰謝料を認めたものもあるようです(ただし、国家賠償請求の事案)。
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