法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その⑩)

2013年8月2日 更新 

 前回は,亡くなった方の子どもや兄弟が死亡した場合に,遺産分割の手続きで生前援助を調整する必要があるのかどうかという話をしました。今回は,父親がなくなった際に遺産分割をしないで置いておいたところ,母親もなくなった場合にどう考えていくのかという話について触れます。ここではよくある男性が先に亡くなる場合を想定していますが,当然逆(母が先に亡くなるケース)場合もありえますが,便宜上取り上げます。

 

 分かりにくい話ですが,とりあえず遺産分割しないでおいて,母親が亡くなった場合に遺産分割をしようという話は割と見かけるように思われます。この場合には,父親の遺産分割と母親の遺産分割の双方をする必要があります。しかも,母親は遺言書で特別のことが書かれていない限り,法定相続分をもつ相続人となります。ですから,父親の財産について遺産分割をして,子どもと母親との間で遺産分割を行います。そのうえで,母親の財産について遺産分割をして,父親と母親の遺産の分割が終わることになります。実際には多くのケースで最終的な相続人が同一の生存している方になるため,一括して遺産分割協議を行い,協議書を作成することもあろうかと思われます(ただし,条項を設けていずれも解決したことを示す必要があります)

 

 分かりやすい例で言うと

 父親Aさんと母親Bさんの間には,CとDという2人の子どもがいました。Aさんは平成15年に亡くなり,Bさんは平成20年に亡くなりました。Aさんの遺産分割協議はされていません。一方で,CさんはBさんから土地を生前に貰っていました。遺言はありません。

 

 この例の場合,BさんはAさんの相続について,2分の1の相続分を持っています。Bさんの遺産分割をするにあたっては,Aさんの相続分に応じて遺産分割で取得した財産をはっきりさせる必要があります。

 そのため,Aさんの遺産分割協議を行います。そのうえで,Bさんの遺産分割手続きを行うことになります。問題は,Bさんの遺産分割手続きで,Cさんが生前にBさんから土地をもらったことをどう考えるのかというものです。

 Cさん・DさんともにAさんの遺産分割手続きからは相続分それぞれ4分の1にちなんだ財産を得ています。ただし,Bさんの遺産分割はこれとは別に行われ,公平の観点からは調整しないとおかしくなりますので,生前土地をもらったことは特別受益として調整の対象となります。AさんとBさんが別個の財産を持っていたケースでは,各自の相続についての調整を考えたうえで最終的な取り分を決める必要があります。これに対して,Bさんがほぼ財産を持っていない場合には,実際には一体となった遺産分割(理屈上はもちろん別)において特別受益を考慮して配分を決めます。

 

 これに対して,さらにCさんがその後亡くなった場合には,Cさんに子どもなどがいればそこでも相続が発生します。この場合は二次相続(ここではCさんについての相続を想定します)を解決する上で必要なAさん(あるいはBさん)の相続に関する特別受益分がCさんの相続人(子供など)に引き継がれ具体的な相続分(遺産分割協議での取り分)を計算することになります。

 

 次回補足などをしつつ,続きます。

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