法律のいろは

離婚と親権その⑱(親権者の変更④)

2013年8月6日 更新 

 前回,離婚後に未成年の子どもの親権者を変更する場合に考慮される事情(裁判例上)について触れました。今回は,いくつかの裁判例を見ながら,実際のところどうなのかを触れてみたいと思います。

 

 まず,親権者の変更を認めた例を取り上げます。

①離婚裁判では母親が親権者と認められたけれども,非監護親である父親が子供を連れ去った事案があります。この事案では数年後に成長した子どもが,母親に引き取られるのを拒んでいるという状態で,父親からの親権者変更の申し立てが認められました。

 非常に難しいケースですが,この裁判例では,一方で連れ去りについて違法(人身保護法でいう拘束にあたる)と判断しつつも,それは親権をもっていないからであると判断しています。他方で,子どもの成長にとっては今いる生活環境での成長が望ましい場合もあるからということで,親権者変更を認めるべき場合もあると判断しています。

 この裁判例は,上記のことを述べたうえで,違法状態(つまり,親権者が父親でないことから「拘束」になる)子をと解消させるべきとも述べて,親権者変更を認めています。

 

 子どもの意思については,今養育監護している方の影響を受けているのではないかということが問題になるところではあります。また,連れ去りは犯罪になる可能性も十分ありますので,こうした裁判例があるからといって,連れ去りをすればいいと考えるのは相当大きなリスクがあると考えられます。

 

②協議離婚をした際に,母親を子どもの親権者と定めたものの,離婚後も父親と同居していたという事案です。この事案では,親権者である母親が同居中に家出をし,その後親権者変更を父親が申し立てたところ,母親が子供をアメリカ合衆国に連れ出したという事情がありました。

 裁判例では,こうした連れ出した経緯(裁判所での手続きを無視したこと)や子どもが父親のもとで安定して暮らしていたのに,未知の外国に連れ出した点等を考慮して,親権者の変更を認めています。アメリカ合衆国での子どもの状態(母親は再婚している模様です)についての話もはっきりしないこと等も理由とされています。

 

 このように,親権者の変更を認めた事案は,親権者親の亡くなっていないケースではかなり特殊なものが多い印象です。次回は,監護権者のみ変更を認めたものなどについて触れていきます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。