法律のいろは

解雇って?(その⑤)

2013年8月17日 更新 

 懲戒解雇について,懲戒解雇をするために必要な事柄と私生活での事柄を理由に懲戒解雇をし売る場合に関して,前回触れました。そのうえで,飲酒運転が発覚した場合の話を少し触れました。今回はその続きです。

 

 前回の補足ですが,懲戒解雇をする前提として,どのような場合に・どんな懲戒処分があるのかを就業規則に書いておくこと・周知することが必要という話をしました。従業員が入手するときに,就業規則を示して会社の秩序を乱した際には懲戒処分を受けても仕方がない旨の同意を取っておく必要があると思われます。

 

 前回は,色々な事情を考慮して,私生活での事柄も会社に与えるダメージが相当大きいと客観的に言える場合は懲戒解雇もできるという話をしました。そのうえで,会社とは関係なく勤務時間外になされた飲酒運転は基本的に会社とは関係がないという話をしました。

 とはいえ,飲酒運転が会社の社会的信用を大きく下げるような場合には,先ほとり挙げた裁判例の話から,懲戒解雇もありうるところです。では,どんな場合があたるのでしょうか?

 まず,旅客運送業(タクシーやバス)等の運転手は,安全運転が当然に要求されますから,こうした事業を営む会社へのダメージは極めて大きいように思われます。また,懲戒解雇とは異なる懲戒処分ではありますが,公務員も法律への模範的な姿勢を強く要求されますので,同様に考えられるでしょう。同じように,模範的な姿勢を極めて強く要求されるような事業の会社では,会社へのダメージが相当に大きいと思われます。

 これに対して,旅客運送業でも事務職では事情が異なります。仕事の内容と飲酒運転の関係が相当に薄くなります。運転手であれば,仕事の安全=会社の信用に大きくかかわりますが,事務職であればそうとは言い難いと思われます。また,たとえば,工場で働いている方の場合にも,そこまで会社へのダメージは大きくはないと思われます。

 中小企業について勘違いすべきではないのは,ここで問題になるのはあくまで社長の感情的な不名誉ではないという点です。

 

 今述べた事情は勤務先や飲酒運転をした方の職種だけの考慮の話でしたが,次のような事情も考慮されるように思われます。

 ①飲酒量や飲酒検知で発覚した呼気中のアルコール濃度

 ②発覚して新聞などで取り上げられた等大きな騒動に至ったかどうか

 ③飲酒運転で人身事故に至るなどの事情があったか

 

 先ほどの話では①~③で大きな問題がないことが前提でした。①で飲酒量があまりに多い(多いほど問題は大きい),②で報道などで大きく取り上げられた,③で大規模な人身事故を起こしたなどの事情があれば,話は変わってきます。

 懲戒解雇は,大きな打撃を従業員の方に与えるものです。今述べた色んな点を考慮して,そうした打撃を与えても仕方ないだけに大きなダメージを会社に与えたと客観的に言えるかどうかは大きなポイントになるように思われます。

 

 次回に続きます。

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