法律のいろは

ハラスメントと労働問題(その⑭~セクハラとは?(11))

2013年8月25日 更新 

 前回は、セクハラの加害者や会社に対して責任を追及した場合、実際のところどのくらい損害額が認められるのかという点についてお話ししました。

 今回はセクハラの加害者や会社に対しての請求以外の、被害者を救済するための制度として、労災についてお話ししたいと思います。

 労災保険とは、業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害などといった労働災害に対して、迅速・公正な保護を行うため、必要な保険給付をすることを目的とした保険の制度です。

 セクハラが原因で被害者がうつ病やPTSDになどの精神疾患にかかった場合、労使保険の対象になります。

 労災については、詳しくは別の機会にお話しをしたいと思いますが、労災が認められるためには、業務災害か通勤災害にあたることが必要です。通常、セクハラは職場で受けるのが一般だと思いますので、ここでは業務災害について説明します。

 業務災害は、業務に端を発する場合で、業務と災害(セクハラによる疾病・障害など)と相当因果関係があるものをいいます。

これはセクハラの場合に限ったことではないですが、ことに精神疾患の発症の場合、業務が原因かどうかがシビアに問題になることがあります。

 と申しますのも、労災かどうか判断をする要件として、

① 対象疾病(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」という通達で定められています)を発病していること

② 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

③ 業務以外の心理的負荷及び個体的要因(遺伝的なものなど)によりその精神障害を発病したとは認められないこと

が必要ですが、

・精神疾患の場合、発症時期の特定が難しいこと

・業務以外の事情(たとえば家庭での心理的に負荷がかかる出来事の有無、遺伝的要因など)によるのか、業務によるものといえるか、判断が難しいこと

といった特殊性があるからです。

 ②については、業務による心理的負荷の強さの判断にあたり、精神障害発病前おおむね6か月の間に、対象疾患の発病に関係したと思われる業務上の出来事、その後の状況を具体的に分析し、それらの心理的負荷の強度がどの程度かを、上記「心理的負荷による精神障害の認定基準について」の別表1で区分して定めています。

 セクハラについては項目を一つ設けて説明されています。

 次回も、セクハラと労災について、さらにお話ししたいと思います。

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