法律のいろは

ハラスメントと労働問題(その⑯~セクハラとは?(13)~)

2013年9月3日 更新 

  前回は、セクハラの被害者を救済するための制度としての労災かどうか判断をする要件のうち、

② 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

ついて、 発病前おおむね6か月の間に別表1の「特別な出来事」にあたる業務による出来事があれば、心理的負荷が極度のものとみて、「強」とするとお話ししました。

 今回はこういった、「特別な出来事」にあたる出来事がないときの評価の仕方についてお話ししたいと思います。

 

 まず、発病前おおむね6か月の間の、業務による出来事が別表1の「具体的出来事」のどれに当たるか判断をします。実際あったことが「具体的な出来事」にぴったり合わないときは、どの「具体的出来事」に近いかで判断していきます。

 別表1では、「具体的出来事」ごとに、平均的な心理的負荷の程度が強いものから弱いものへ「Ⅲ」→「Ⅱ」→「Ⅰ」としています。

 セクハラについては、前にもお話ししたように、別表に項目が一つ設けられていますが、具体的には単にその場でセクハラにあたるような発言が1回あった、というだけでは心理的負荷は弱いということになります。

 これに対して、胸や腰を触られた、というような身体的な接触を含む場合は、継続的に行われる場合はもちろんですが、継続的でなくても、会社が適切・迅速に対応せず、その結果精神疾患になった場合には「強」と評価されることになります。

 また、身体的に触るという行動がなく、性的言動のみの場合でも、発言中人格否定的内容を含み、かつ継続して行われた場合、あるいは人格否定的な内容は含まれていないものの、継続して行われ、かつ会社がそのような言動があるのを知りつつ、適切な対応をしていなければ「強」と評価されるので注意が必要です。

 このように、心理的負荷の強弱を判断するにあたって、単に加害者の行った行為の内容のみならず、行為の継続性や会社が迅速・適切に対応したかをも考慮することを念頭に置いておく必要があります。

 なお、実際にあった出来事が具体例と異なる場合は、「心理的負荷の総合評価の視点」や具体例を参考にしつつ、個々の事案ごとに考えていくことになります。

 ちなみに、セクハラの場合、総合評価の視点としては、

 ・セクハラの内容・程度等

 ・継続する状況

 ・会社の対応の有無、内容・改善の状況・職場の人間関係等

 が挙げられています。

 セクハラの場合は、繰り返されることもよくありますが、その場合は繰り返されている出来事をまとめて評価し、継続することで心理的負荷も強まるとしています。

 次回は、出来事が複数ある場合の評価の仕方などについてお話しします。

 

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