前回は、労災か判断する要件のうち、「特別な出来事」にあたる出来事がないときの評価の仕方についてお話ししました。
今回は、まず出来事が複数ある場合の評価の仕方についてお話しします。
たとえば、被害者が会社の上司とのトラブルがあった上、セクハラを受け、それによりうつ病にかかった場合を考えてみます。
このように、うつ病(対象疾病)の発病に関係する業務による出来事が複数ある場合には、以下のように考えます。
①・ 「特別な出来事」にあたる出来事がある場合→心理的負荷の総合評価が強かどうか判断
・「特別な出来事」にあたる出来事がない場合→別表1「具体的出来事」のどれにあたるか、あるいは近いかで心理的負荷を評価
→いずれかの出来事で「強」であれば、業務による心理的負荷を「強」と判断
② いずれでも単独で「強」とならない場合
複数の出来事が関連しているかどうか判断して、
・出来事が関連して発生→全体を一つの出来事として評価して、原則として最初の出来事を「具体的出来事」として別表1にあて
はめ、関連している出来事は出来事後に生じた状況と考え、全体的に評価。
・出来事が関連していない場合→出来事の数、各出来事の内容、時間的にどのくらい空いているかなどをみて、全体的に心理的な
負荷がどうであったか考えていきます。
たとえば、上司から業務に関して強い叱責を受け、その際に性的言動を受けた、という場合は,まず、出来事が関連して発生し ているといえます。そして、最初の出来事である、上司による強い叱責を「具体的な出来事」とみることになりますが、これは心理的負荷の強度が「中」となります。そして、性的な言動がその1回かぎりで終わったのであれば、心理的負荷が「中」となります。しかし、その後も継続的にその上司から性的言動を受け、会社もそういった状況であることを把握しながら、適切な対処をとらなかったのであれば、心理的負荷の程度が「強」となります。
なお、出来事後に生じた状況については、
ⅰ 仕事の裁量性がなくなった
ⅱ 職場環境が悪化した
ⅲ 職場の支援・協力などが欠けている
ⅳ これ以外の状況で、出来事に伴い発生したと認められるもの
があれば、ひどいときは場合によって総合評価として「強」に行きやすくなります。
次回は、労災が認められるための、他の要件について少し触れたいと思います。
早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。
© KEISO Law Firm. All Rights Reserved.