法律のいろは

不貞・不倫(浮気)と慰謝料請求(その⑫)時効の問題①

2013年9月8日 更新 

 不倫・不貞(浮気)についての慰謝料請求に関する問題の一つに時効(消滅時効)の問題があります。配偶者に請求するのか・不倫(不貞・浮気)相手に請求するのか・離婚までに請求するのか・離婚後に請求するのか,で変わってくるところがあります。今回から,このテーマについて触れたいと思います。

 

 まず,不倫・不貞の慰謝料請求は,加害者と事実を知ってから3年であるとよく言われています。これは,不倫・不貞が貞操権侵害という不法行為を原因とする損害賠償請求であるため,法律上加害者と事実を知ってから3年と定められているためです。ここでいう加害者とは不倫・不貞をした相手方と配偶者,事実とは不倫・不貞の事実のことを指します。不倫・不貞とは,知った時点までの不倫・不貞のことです。

 

 不倫・不貞の相手方に対して,慰謝料請求をするうえで問題となるのは,氏(いわゆる上の名前)は知っているけれども,名前(下の名前)や顔も知らないし,どこに住んでいるかもわからないという話が時々あります。顔は知っているけれども,どこの誰か分からないというケースもあります。この場合,現実に請求をすることにはもちろん問題があります。このような時ですら,加害者を知ったことになって時効のための3年の中に含めるのでしょうか?

 裁判例によると,氏や顔は知っていたけれども,名前や住所までは知らない状況下でかつ事実上損害賠償請求が困難な場合は,加害者を知った事にはあたらないと判断したものがあります。裁判例のケースは,不倫・不貞の慰謝料請求ではなく,戦時中に警察で不法行為の被害を受けた方が,戦後加害者を探索して氏名と場所を確認したというものです。やや特殊なケースではありますが,裁判例は一般論として,損害賠償請求が可能な状況のもとで,請求が可能な程度に加害者を知った時が時効がスタートする加害者を知った時であると判断しています。この部分は不倫・不貞を理由とする慰謝料請求にもあてはまるものです。

 ちなみに,ここでいう時効とは,不倫・不貞の相手方(配偶者)が不倫・不貞をしていたことを知ってから,3年経過するまで慰謝料請求をせずにいた場合の話です。3年が経過した後に,慰謝料請求をしても,相手方が時効によって慰謝料請求が認められない旨を主張してきた場合には,いざ裁判で慰謝料請求をしてみても,請求が認められないという状況に置かれてしまうことを指します。

 ですから,不倫・不貞の相手方がよくは分かっていない状況では,時効の3年がスタートするか否かはかなり重要となっていきます。もちろん,請求をしていざとなれば裁判でも認められるようにするためには,証拠を固めておくことが重要です。

 

 次回に続きます。

 

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