法律のいろは

嫡出子と相続(最高裁の決定)(その②)

2013年9月14日 更新 

 昨日,先日出た嫡出子と非嫡出子の相続分の違いに関する最高裁の決定について触れました。今日はその続きについて触れていきます。

 

 昨日は,最高裁は,嫡出子と非嫡出子の相続分(法律上のもの)に民法上違いがある点を憲法に違反するという判断をしたこと,憲法に反するような状態が生じたのは遅くとも平成13年7月であるということを触れました。

 そのうえで,これまで,この民法の定めは合理性があって憲法に違反しないと繰り返し言ってきた最高裁の裁判例を変更しないと言っている話も触れました。そのため,遺産分割が済んでおらず,相続開始後に放ってあるものの遺産分割をこれからする場合に,嫡出子と非嫡出子でなお相続分に違いが生じる可能性があることを述べました。とはいえ,相続開始時点によっては,今回の決定で決着がついていないもの(民法の定めが憲法に反するか不明)がある点には注意が必要です。その後,民法の規定が改正され,現在は子どもであれば相続分に違いはありません。

 

 これに対し,これまで遺産分割が終わっているものはどうでしょうか?多くの遺産分割ではそこまで大きな対立が生じないと思われますので,遺産分割をしようと思ってから,そこまで時間がたたず決着しているケースも割とあると考えられます。

 こういった場合に,平成13年7月以降の相続だからということでやり直しをしていたら,それこそ紛争化してしまいかねません。そうしたこともあり,最高裁の決定では,既に終わった遺産分割については,決定は影響を及ぼさないと言っています。

 こういったところから,今後の問題は決着がついていない時期に相続が開始されたけれども,遺産分割をしていないケースになりそうです。

 

 ところで,今回の決定は,あくまで遺言がない場合の法定相続分について,嫡出子と非嫡出子の間で差をつけてはいけないというにすぎません。ですから,遺言があればそれで問題は生じません。また,嫡出子(あるいは非嫡出子)が親と同居している等して寄与分(相続財産が増えることへの特別な貢献を遺産分割で考慮する)が生じる可能性があるとか・特別受益(生前受けた援助を遺産分割で考慮する)という調整は,特に影響をうけません。

 

 相続をめぐる問題は,こうした相続分の違い以外に,遺産分割での調整要素があるのかどうか・遺産はどこまでか等多岐にわたるものです。紛争を起こさないようにどうすればいいかは,考えた方がいい問題の一つかもしれませんね。

 

 追加での補足ですが,嫡出子かどうかでの法定相続分の違いがあることは,例えば長い間遺産分割の手続きをせずに放置をしておいた場合には大きな意味を持ってきます。田舎に土地があるなどで特に相続税もかからないだろうということで置いたあった場合などです。こうしたケースは少なからず,平成12年6月以前に相続が発生していたことはもちろん,最悪昭和55年以前に相続が発生しそれについても遺産分割協議などで解決をしていないこともありえます。こちらの影響は,かつては配偶者の相続分は1/3であった時期もありそのことが対応に反映することがありうるという話です。配偶者もなくなり,その相続人が元々のの所有者と同じであれば問題は小さいですが,例えば後妻であってその方との間には子供がいないという場合には,相続人が異なることもありえます。

 この場合には,以前の法律の規定による対応を考える必要が出てきます(嫡出子と非嫡出子との間の相続分の違いも同様)。現在の法律の規定をそのまま当てはめて解決できないケースも出てきますので,特に長く放っておいた相続問題の対応には注意をする必要があるでしょう。

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