法律のいろは

離婚と親権その⑲(親権者の変更⑤)

2013年9月23日 更新 

 離婚後に親権者と定めた親から他方の親へ親権者変更を求めた場合に,どんな裁判所の判断が示されるのかという実例を前回触れました。前回は,親権者である親がなくなっていない場合を取り上げました。

 

 今回は,まず親権者の変更は認めなかったけれども,監護権者の変更を認めたという例について触れます。監護者とは,簡単に言えば子供の身の回りの世話や監督を行う者ということになります(法律用語で身上監護を行うということです)。普通,こうした身の回りの世話や監督とお金の管理はいずれも親権というものの内容の一つとなっています。ですから,監護者を親権者から話すのは原則としてないことです。

 ただし,場合によっては子も身の回りの世話等についてのこととお金の管理が適している親が別々になる場合もあります。これは,親同士(つまり結婚している夫婦)が別居あるいは離婚していない限り考えにくい話ではありますけど,生じるケースはあります。

 

 そして,親権者の変更を求めたものの,そこまでは認められず監護者の変更のみ認められたケースというのも今述べたような事情があったケースです。内容としては,夫婦が離婚する際に,未成年の子どもの親権者は父親とされました。その後,母親が事情が変わったからということで,親権者の変更を求める申し立てを行い,調停では話し合いがつかなかったために,家庭裁判所の判断(審判)に至りました。審判によって,親権者の変更に関して判断がなされました。

 このケースにはかなり特殊な事情があります。それは,協議離婚ではあるものの離婚届の親権者を夫とするかの記載があったかについて争いがあること・別居後子供たちの養育監護を基本的にしていたのは親権者ではない母親(妻)であったこと・離婚に至る原因に妻の借金問題があった事です。ちなみに,子供は審判の時点では中学二年生・小学五年生・3歳のようです。

 このケースについて

 ①離婚前を含めて妻のもとで主に養育され問題はなく

 ②子供を養育監護する能力について妻に問題はない

 ③上の二人の子供は妻の元で暮らすことを望み,3歳の子供(女の子)についても十分

 な養育監護には母親の元の方がいいだろう

 ④妻の借金問題の大きさからは,財産管理は夫の方が適切にできるだろう

 という根拠から,監護者と親権者を分けています。

 

 ①から③は,子供の養育監護について妻の方が適切ということをいうものですが,幼児(女の子)については母親の養育監護が望ましいと考慮しているようです。一方でお金の管理については問題が大きいので,元々親権者であった父親(夫)が親権者のままと判断しています。

 

 先ほど述べましたように,特殊な事情のあったケースということもできますが,親権者の変更を求める際には,その中で監護者の変更も求めていると考えてこうした判断をしています。わざわざ親権と監護権が別れるのはそれなりの背景事情が存在するものと思われます。

 

 次回に続きます。

 

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