法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その⑮)

2013年9月25日 更新 

 持ち戻し免除の意思表示の話について,ここ何回か触れています。亡くなったからから生前に援助を受けた相続人について,遺産分割の際に,受けた援助を考慮しなくてもいいという亡くなった方の意思表明のことです。

 はっきりと持ち戻し免除の意思表示をしなくても,様々な事情を考慮して,持ち戻し免除の意思表示があったと考えられることがあるという話を前回・前々回としています。その代表例として,前回子どもへの学資について触れました。

 

 このほかに,持ち戻し免除の意思表示があったのではないか問題となる代表例としてはまず次のようなものが考えられます。

 ①娘が嫁ぐ場合の持参金・支度金

 ②自分の土地を子どものうち特定の者に無料で住まわせた場合(無料で借りて住む権利      を使用借権といいますが,この権利について)。特に,同居・面倒を見てもらうのために家を建てて住んでもらう等,亡くなった方もそれなりに見返りを受けている場合

 ③妻の生活保障のために,生命保険を自分にかけておいた場合の死亡保険金(掛け捨て型の場合)

 

 これらの例では,そもそも特別受益という遺産分割の際に調整を必要とする要素になるかどうか自体が問題となるところです。特に,死亡保険金については,原則として調整の対象にはあたらないけど,例外的にあたる場合があることは,既に前のコラム(このタイトルのシリーズの⑤)で触れました。実際に,調整が必要な要素だと考えられる場合でも,亡くなった方の意思の表明次第では,調整のリストから外れることになります。

 

 このほかにも

 ④農家や会社で跡取り(子供)に事業を引き継がせるため,跡取りに本来の相続分の他に,農業や会社の事業をするために必要な土地や設備などを相続させる必要がある場合

 ⑤相続人全員にそれなりに贈与や遺贈をしている場合(亡くなった方の生前あるいは遺言で財産を子どもたちに分配している場合)

 

 といったケースでは,はっきりとした意思表明がなくとも持ち戻し免除の意思表示が認められる可能性はあります。

 

 あくまでも,はっきりした意思表明がない場合には,それなりの事情がないと遺産分割の際に,援助を考慮しなくてもいいという意思は読み取ることができません。あくまでも,特定の相続人(子供)に対して相続分以外に財産を与える意思があったと考えられるだけの特別な事情が必要になってきます。法改正で,持ち戻し免除の意思表示がされたと考えられる場合(推定される場合)が定められたことも,はっきりした意思表示がないと持ち戻し免除の意思があったとは評価できないだろうということの表れでもありますので,意向があればきちんと遺言などで残す必要があります。特別受益という点が考慮されるものではありますが,遺留分を侵害する遺贈や生前贈与を特定の喪にについて考慮しないとすることを遺言などでの持ち戻し免除の意思表示で行うことはできません。同じことは遺産分割の修正要素である寄与分についても言えます。

 ですから,どんな場合でも持ち戻し免除の意思表示があるとは考えられない点や餅戻し免除が可能となるのは何についてなのかには注意が必要です。

 

 

 

 

 

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