法律のいろは

離婚と親権(その⑨)人身保護手続き・前半

2013年5月24日 更新 

 離婚前・離婚後で問題となる子どもの引き渡し請求について,これまで主に家庭裁判所での調停や審判の話をしてきました。このほかに,人身保護法に基づく手続きがあります。

 今回は,人身保護法に基づく手続きについて触れていきます。

 

 人身保護法には,法律上正当な手続きによらないで,身体の自由を奪われている方の解放を目指す手続きが定められています。本来は,別居中や離婚後の子どもを念頭においたものではないのですけれども,別居中・離婚後の子どもの引渡しの場面でも使われてきました。

 

 現在子どもを養育監護していない親から,子どもを養育監護している親等への請求が多い印象があるところです。

 ①法律上の正当性がないこと②他の手段がないか,あったとしても目的達成が迅速には達成しにくいという事柄が,法律上要求されています。基本的に弁護士を代理人として請求することが必要とされています。

 

 子どもの引渡しの場面については,別居中の親権者である親同士の間では,人身保護法にもとづく手続きは使いにくいものとなっています。裁判例で,法律上正当性がない⇒養育監護することにはっきりした違法性があるというには,

 

 

 ①養育監護している親の,親権の行使が法律による手続きによって制限されているのに,従わない

 ②養育監護している親の元では義務教育が受けさせてもらえない・健康面に問題が出る

 

 ような特別な事情が必要とされています。ちなみに,②の場合には,子どもの引渡しを求める親(親権者)のもとで養育監護すれば,問題なく子どもを養育監護できることが必要とされています。

 

 親権があるのだから,基本的に子どもを養育監護するのは問題がないという判断が前提としてあるためです。ただし,①と②はあくまでも例を挙げている点には注意は必要です。

 

 こうした判断がなされているために,人身保護に基づく手続きは,離婚前の別居中の子どもの引渡しでは使いにくい手続きとなっています。

 

 なお,離婚前・別居中に人身保護法に基づく手続きを認めた例としては

 (1)予め子どもを返すという約束を家庭裁判所の調停でしたうえで,子どもを預けたのに,返してもらえなかった

 (2)予め子どもを返すという約束を家庭裁判所の調停でしたうえで,子どもとの面会交流をしたけれども,子どもを   

  連れ去った

 

 というものがあります。

 いずれも,家庭裁判所での調停手続きで約束をしたにもかかわらず破ったという点で,先ほどあげた①や②と同等と考えられているようです。

 

 

 このように,離婚前・別居中では使いにくい手続きですが,離婚後については次回に復習を兼ねて触れていきたいと思います。

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