法律のいろは

離婚と財産分与(その㉔)

2013年8月27日 更新 

 離婚の際の財産分与について,以前退職金の話をしました。少し今回はこの点を補足します。

 

 このシリーズのその⑥あたりで退職金の話をしました。その際には寄与があるのだから財産分与の対象となることを前提とした話と財産分与の対象にならないこともありうるという話をしたかと思います。これに対して,退職まで10年以上あるケースでは退職金がもらえるかどうかわからないから,財産分与の対象とするのはおかしいという反論がなされることもよくあります。

 一般には,退職金が発生する蓋然性が高くないと財産分与の対象とならないことは多いとは言われています。これは,将来までに勤めている会社の倒産や懲戒解雇などによって退職金をもらえなくなる可能性もあるではないかという考えにもとづくものです。ただ,給与の後払い的な性格であるのに,寄与のある配偶者が全くもらえないという点で不合理なところも出てくるところです。

 筆者の印象では,以前お話ししたように分与の対象自体にはなる例が多いように思われます。裁判例の中には,将来退職金が支給されたことを条件として退職金の財産分与を命じた例もあります。ただ,多くは結婚期間に応じて,退職時期が近くない限りは別居時点までの退職金見込み額の財産分与を認める前提にあるように思われます。

 もちろん,裁判例の中には退職まで10年を大きく超える場合に退職金を財産分与の対象から外したケースもあります。ただし,この場合も退職金の存在を財産分与の金額を決める一つの要素として考慮すると言ったものがあることには注意が必要です。つまり,財産分与において退職金の存在がかなり考慮される可能性があります。

 

 ですから,財産分与を求める側は,全くどうなるか分からない場合を除けば退職金(退職まで期間がかなり近い場合を除けば全額ではありません)をも含めて請求してみることになるでしょう。逆に財産分与を求められる側(多くは夫になると思われます)は,退職までの期間が10年を超えて相当期間ある場合には,退職金は支払われるかどうかわからないから,財産分与の対象とはならないと争うという方法もあるかと考えられます。

 ただし,10年を超えるという期間もさることながら,もらえる蓋然性ですので,会社については公務員や大きな会社のように倒産のリスクの低いところに関しては同じ期間でももらえる蓋然性は高くなる点には注意が必要です。結局は個別の事情によることになろうかと思われます。

 

 

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